【中編小説集】婚約破棄して”ざまあ!”になった人々の話

ジャン・幸田

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結婚式をぼっちで挙げた花嫁は探偵をする(旧題:結婚式で勘違いしていたと破棄されたあとに)

【11】白夜(2)

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 極地を移動するのは難しい事だという。磁石が当てにならないからだ。向かう方向がズレていたらあっという間に遭難してしまう。だから、航空機などが極地を移動する際には太陽や星を観測して位置を確認する航法士という運航乗務員が乗務しているという。将来的に技術が発達すれば不要になるかもしれないが。

 空の乙女号は船長の他に、操縦士と副操縦士、航空機関士、通信士、航法士など運航を携わる乗務員が交代要員も含め十数人いたという。その人たちは操舵室などにいたはずであったが、疑問もあった。それだけ人数がいるのにどうやってハイジャックしたのだろうかだ。そんな疑問は当然捜査機関も気づいているはずだ。

 ローズマリーは盗み聞きされるリスクもあるので、隣にいるリチャードにこう筆談した。

 ”ダグラスと愛人ブラックバーン”の二人だけでハイジャックなんかできるわけないわね。

 するとリチャードは”そうだね”と返答してきた。まあ、それぐらいの推理は誰でもすることであった。法的に”結婚”して妻になっていても、ダグラスの為人はローズマリーは全く知らなかった。伝え聞いた話では。それなりにビジネスマンとしてやり手だということであったが、それが裏目に出たのかもしれない。なんらかの反社会勢力にハイジャックの片棒を担がされたのかもしれなかった。全ては推測でしか現在のところなかったが。

 「皆様の中に、身代金の要求など密かに受けている方はおられませんか? もしかすると皆様のご家族は拘束されているのかもしれません。そしてハイジャックグループが金銭目的で今回の犯行を実行したのかもしれません。もし身代金を支払おうというのであれば、我々を信じてください。是非協力してください」

 捜査官ハインリッヒの発言に会場は騒然となった。生きているかもしれないと。でも根拠は示されなかった。説明会は現地時間の深夜まで行われたが、太陽は地平線近くにあった。白夜だから明るいままなのは当然だった。
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