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選ばれたくないのに!

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 緊急避難的に禁じられた召喚術が行われたが、マンセルにやらせるのは問題でしかなかった。実力的には申し分ないはずだが、あまりにもいい加減な性格なので、重要な儀式が失敗してしまうのが危惧されていた。召喚術が成功したと思われる現象が起きた時、見守る人々からは大歓声が上がったがすぐに打ち消されてしまった。魔方陣の中心に表れたのは、真っ赤な人の形をした何かだった。

 「ま、マンセルよ! 成功なのか?」

 国王は唖然とした表情のままで尋ねてきた。

 「決まっています!なにかが召喚されています!」

 力強い言葉が会場に響いていたが・・・あれはなんだ? そんな空気が支配していた。その場にいた誰もが想像していたものと違いすぎた。勇者もしくは聖者、または龍神の類だと期待していたというのに!

 「なんか・・・人の形をしたなにかみたい・・・」

 重苦しい空気のなか最初に発言したのは第一王女のソフィアであった。彼女の瞳には真っ赤な人の影のように見えた。あんな衣装なのかハダカなのかわからないし、なんだろうかあれ? というのが感想だった。
 
 「マンセルよ! お主何を召喚したというのだ?」

 国王アレスの声は引きつっていた。ある程度おかしなものが召喚されるのは覚悟していた。せめて、覚醒すればなんらかの能力を発揮する少女であればと期待していた。そうでないと禁を犯した意味がないというのに。

 「はい、異世界の少女だと思います!」

 マンセルは本気でそう思っているかのような、自信に満ちた声で答えた。
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