ヘレンと奈津 -老婆から転生して主人とやり直したいと思ったのにあの人は浮気者でした!ー

ジャン・幸田

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壱章:例外中の例外の少女ヘレン

17.相棒探し(2)

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 秋の夕陽が部屋に差し込んでいた、そのときある光景が脳裏によみがえっていた。和夫さんと最初にあった日の事を。たしかこんな風に秋の夕暮れが彼を包んでいたのを。でも、いまは昭和時代の日本ではなく、日本とは異世界の学校だ。男を探しているとはいえ今は和夫さんの転生体ではなく競技会の相棒を探さないといけなかった。そんな心で色々考えていたのもさっきからジャヌルス先生がルドルフ・イワンドルフとやらの騎士の資料を持ったままでブツブツいっていたからだ。早くどうにかしてほしいというものだった。

 「ヘレンさん、ごめんなさい。このルドルフなんだけど昔っからの知り合いなのでよーく知っていたから何からしゃべれば良いのか考えていたのよ。でも・・・興味ないのなら次のこの人なんか良いと思うわ。
 この人はどうかしら。マルティン・ヴァールルグだけど、この人は公家の衛視隊見習いで、今回の競技会に参加したいのであちらこちらにお願いしているんだけど、なかなかの能力値があってね・・・」

 ジャヌルス先生は明らかにルドルフとやらの説明を省いてしまった。ほかの候補の説明はそれなりに丁寧だというのにである。それは何かがあるんだと思うと余計に気になって仕方なかった。窓ではお日様が遠くの尖塔に消えようとしていたので、そろそろ先生はやめようということで、片付けを始めてしまった。明日もゆっくり候補を考えよう締め切りまでに決めればいいんだということにしてしまった。しかし私はなんでか分からないがルドルフの事が気になって仕方なかった。

 「あのう、先生。途中で説明を打ち切られましたが、私はなんとなくルドルフ・イワンドルフさんが気になって仕方ないのですが、もう少し彼の事を教えてくれませんか?」

 私の言葉は先生からすれば的を射抜く矢のようだった。先生の顔は石をぶつけられた鳥のように大きくなっていた。そして脂を蓄えたその身体を震わせていた。明らかに動揺していた。

 「何故なのよ! なんであんな女たらしの資源の無駄使いの野郎に興味をもつんだよ! なんでなんでなのよ!」

 その声は相当興奮していたので、今度は私の方が目が大きくなっていた。あんまりのことなんで思わず私は両耳に垂らしている編髪を掴んでいた。

 「そういわれても・・・わたしの慧力が感じたからですわ、きっとそうですよ、たぶん」

 「そうかあ・・・あなたの慧力が教えてくれたわけ、って、なによ! 本当のことならあいつの資料があるんだと分かっていたら省いてからゴミ箱にでも入れとけばよかったわ! なんで応募しているんだあいつは? 若い娘に気に入れたいんかいな!」

 先生の声は明らかに嫌悪感と憎悪と侮蔑の念が籠っていた。なんで知り合いなのにここまでできるというのか、まさか? そう思い私は恐る恐る聞いてみた。

 「せ、先生、間違っていたら申し訳ないのですが・・・そのルドルフさんとは婿入りしてもらうのを前提にお付き合いされていたのですか?」

 私は恐ろしくて仕方なかったが、なぜか私は彼の事をもっと知りたいと思わずにいられなかった。

 「お付き合い? それは違うわ。ルドルフは私と同族なのよ! そう従姉弟同士なのよ! 説明しなくても分かるわよね、同族の従姉弟同士は婚姻できないって!
 なぜ、ここまで言うのかというとあいつは私ら親族の恥さらしみたいな奴なんだ!」

 「恥さらし? なんか凄い無能だとでも? それとも・・・」

 私は変な汗をかいていた。なんで全く会ったことない男の事でそう感じるのか訳が分からなかったが。

 「無能だったらよっぽどのことならそっちの方がよかったかもしれないわね。そうすれば誰にも相手されずに、厄介払いにして適当な家にでも働き手として婿入りしてもらえばいいだけだから。でも、あいつは・・・女にモテモテなのを良いことにあちらこちらの家に迷惑をかけて・・・おかげでイワンドルフ家の評判は地に落ちたのよ」

 「あれ? 先生の家名って違うのではないですか? たしか・・・マリンブルグでは?」

 「ああそれ? あれは父の実家の姓なのよ。いろいろ事情があってそうしなければいけなかったのよ、ルドルフのせいで!」

 「そんなにルドルフさんて酷い人なんですか? 暴力的とか詐欺師みたいだとか」

 「暴力的ではないなあ、あんなに女にとって心地よい男はいないから。まあ詐欺師という例えば正解に近いな」

 そういって先生はルドルフさんの資料を机の上に叩きつけるように放り出した。

 「ところでヘレンさん、あなた17歳だったわね。それと誰とも婿取契約をしていないわよね?」

 婿取契約とは有力な家柄の娘が将来の働き手としての男を家に迎え入れる約束で、それをすれば例外的に未成年で在学中でも家庭を持つのが許されるというものだった。しかし私は三女なので家の跡取りではないので必要性がなかったので関係なかった。

 「ええ、していないです。私は例外中の例外の娘ですよ! この身は公家に預けられているのも同様ですわ!」

 「そうだったわね、あなたはどこかの偉い家柄の出身ではなかったわね。ルドルフはめぼしい女がいればだれとでも婿取契約をするのよ。そして破棄するんだよいつも?」

 「破棄ってなんのためにですか?」

 「まあ、あなたももうすぐ成人になるんだからいうわよ。そうやって女を乗り換えるんだよ! 別に付き合うなとはいわないけど、親族として迷惑なんだよルドルフは! 私もどれだけあいつの尻拭いをさせられたんというものか・・・」

 「乗り換えるってことは・・・どういえばいいのですが、言っても良いですか先生!」

 「いいわよ、ヘレンさん。そんなこと誰でも思うだろうね浮気性だと!」

 「やっぱり・・・」

 私の慧力が反応したルドルフという男は浮気性だと知らされた瞬間だった。普通ならそんな倫理観に劣る男と一緒に競技会に出たいとおもうはずないのだけど・・・それでもなお私は・・・
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