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壱章:例外中の例外の少女ヘレン
20.ルドルフは
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ジャヌルス先生はとにかくルドルフが嫌いだったようだ。もし血縁者でなかったら絶交したいとおもっていたのは確かのようだ。でも出来ないのは血縁者として面倒を見てやるという義務感があったのかもしれない。
紫水晶ダンジョンは岩山の地下に迷宮のように広がっているが、地上にあるのは小さな砦のような粗末なレンガつくりの建物だった。建物は平屋で主催者たちがつかっているので、参加者全員がその建物に続く山道で待機している状態だった。
その日は冬が到来するのを告げるかのような冷たい強風が吹きつけていたので、参加者たちは寒さをこらえている水鳥のような姿でじっとしていた。そんな参加者を見ながら歩いてきたのがルドルフだった。なぜルドルフだとわかったのかといえば、背中にのぼりをつけていたからだ。そののぼりはとある商品を行商していた時に使っていたものだった。
「ルドルフ! あんた騎士なんでしょ! なんでウマで来ないのよ!」
ジャヌルス先生の怒声が響くと、風音にかき消されそうになりながらも続いていた周囲の話し声が止まってしまった。先生の怒気が周囲の空気を凍らせてしまったのだ。
「決まっているじゃないか、騎士といっても今どきウマなんか使う者はいないだろ! あくまで騎士は階級であって本当にウマに乗って戦う事なんかないだろ!」
その声に私は誰かを思い出そうとしていた・・・それは・・・自転車でやってきた?
「それよりも忘れていなかったんだわね! 今日はあんたが出れるダンジョン杯の日なんだからね! あんたなんか騎士になってからロクな事をしていないんだから。なんだよ、この前の慰謝料の支払い命令書は? あんたに関わっていたらひと財産失うだけよ!」
「おいおい、大姉さん! 今日は俺は説教されに来たんじゃないんだろ! そちらの女子生徒と参加しにきたんだから! 顔を見せてくれないかい!」
その時まで私は他人の振りを決め込んでいたので、二人のやり取りは耳で聞いていただけだった。でも、なぜかその声は懐かしかった。
「ちょっとまった! ルドルフよ! 間違っても喰うんじゃないんだぞ! これから合わす子は! 公主殿下が目にかけている例外中の例外の少女なんだから! もし、万が一の事があったら殿下になんて申し開きすればいいのか・・・そんなことになってはならぬぞ!」
先生のその言葉の本気度は相当なものだった。たしかに例外中の少女である私になにか間違いがあったら・・・私はともかく皆に迷惑をかけそうだった。
「ヘレンさん! 紹介するわ! こいつがルドルフよ! 面倒くさかったら途中で棄権したって構わないからね!」
わざわざ人をダンジョン杯に参加させておきながらなんていう言い方なんだと少しお冠になっていた私は、不機嫌な顔のままでルドルフを見上げた。その時地面に座り込んでいたので下から仰ぎ見るような姿勢であったが、ルドルフの顔に即釘付けになってしまった!
「はじめ・・・まして?」
その顔は奈津の曾孫の悠亮にとても似ていたから。まさか悠亮がこの世界に転移してきたわけなの? でも、それは違うはずだった。でも似ていた・・・とても・・・
「ヘレンさん! なんでこんな奴に感動しているのよ! そんなんじゃあ戦えないわよ!」
私が硬直していることに気付いた先生が肩を叩いたのではっとした。 するとルドルフはいきなり私の顎に手をかけた。
「思っていたよりも美形じゃねえかよ! てっきり大姉さんが相棒になれというぐらいだから武骨で頑丈な家具みたいな娘だと思っていたんだぜ! まあ、一緒にやろうじゃないか!」
武骨で頑丈な家具ってどんな意味なんだよ! 私は食いついてやりたかったが、エントリー締め切りを予告する鐘が鳴り始めたからやめた。それにしても自転車旅行を続けていた悠亮がこの世界に飛ばされてきたかのような想像をするほどよく似ていた。そして和夫さんにも! でも、こんな無礼な奴でなかったはずだ和夫さんは! もう少し紳士的だったし初対面でいきなり顎に指をかけるような真似をしたことなかったし!
「ヘレンさん、ルドルフ! わかっているんだろうけど、今回のダンジョン杯で無理はしないでちょうだい! 今回は小手調べぐらいだから競技会の雰囲気を味会えば充分だから! だから、緒戦で負けていたら棄権してもかまわないから!」
「ちょっと待ってくれよ、大姉さん! 参加する以上はなにか持って帰りたいんだぜ! こんな山奥まで来たんだから!」
「おだまり! あんたみたいな不良騎士は人様の迷惑をかけるような事をしちゃだめだ! だからヘレンさんを手籠めにしちゃだめだぞ! そんなことをしたら本当に絶縁してやるんだから!」
先生とルドルフの口喧嘩はエントリー係の前まで続いたが、そこに来た時意外な女がいた。
「ヘレン! あんたになんか負けないからね!」
そう一方的に言い寄ってきたのは、同級生で一方的に私をライバルだといって目の敵にしているマリーヌだった。
紫水晶ダンジョンは岩山の地下に迷宮のように広がっているが、地上にあるのは小さな砦のような粗末なレンガつくりの建物だった。建物は平屋で主催者たちがつかっているので、参加者全員がその建物に続く山道で待機している状態だった。
その日は冬が到来するのを告げるかのような冷たい強風が吹きつけていたので、参加者たちは寒さをこらえている水鳥のような姿でじっとしていた。そんな参加者を見ながら歩いてきたのがルドルフだった。なぜルドルフだとわかったのかといえば、背中にのぼりをつけていたからだ。そののぼりはとある商品を行商していた時に使っていたものだった。
「ルドルフ! あんた騎士なんでしょ! なんでウマで来ないのよ!」
ジャヌルス先生の怒声が響くと、風音にかき消されそうになりながらも続いていた周囲の話し声が止まってしまった。先生の怒気が周囲の空気を凍らせてしまったのだ。
「決まっているじゃないか、騎士といっても今どきウマなんか使う者はいないだろ! あくまで騎士は階級であって本当にウマに乗って戦う事なんかないだろ!」
その声に私は誰かを思い出そうとしていた・・・それは・・・自転車でやってきた?
「それよりも忘れていなかったんだわね! 今日はあんたが出れるダンジョン杯の日なんだからね! あんたなんか騎士になってからロクな事をしていないんだから。なんだよ、この前の慰謝料の支払い命令書は? あんたに関わっていたらひと財産失うだけよ!」
「おいおい、大姉さん! 今日は俺は説教されに来たんじゃないんだろ! そちらの女子生徒と参加しにきたんだから! 顔を見せてくれないかい!」
その時まで私は他人の振りを決め込んでいたので、二人のやり取りは耳で聞いていただけだった。でも、なぜかその声は懐かしかった。
「ちょっとまった! ルドルフよ! 間違っても喰うんじゃないんだぞ! これから合わす子は! 公主殿下が目にかけている例外中の例外の少女なんだから! もし、万が一の事があったら殿下になんて申し開きすればいいのか・・・そんなことになってはならぬぞ!」
先生のその言葉の本気度は相当なものだった。たしかに例外中の少女である私になにか間違いがあったら・・・私はともかく皆に迷惑をかけそうだった。
「ヘレンさん! 紹介するわ! こいつがルドルフよ! 面倒くさかったら途中で棄権したって構わないからね!」
わざわざ人をダンジョン杯に参加させておきながらなんていう言い方なんだと少しお冠になっていた私は、不機嫌な顔のままでルドルフを見上げた。その時地面に座り込んでいたので下から仰ぎ見るような姿勢であったが、ルドルフの顔に即釘付けになってしまった!
「はじめ・・・まして?」
その顔は奈津の曾孫の悠亮にとても似ていたから。まさか悠亮がこの世界に転移してきたわけなの? でも、それは違うはずだった。でも似ていた・・・とても・・・
「ヘレンさん! なんでこんな奴に感動しているのよ! そんなんじゃあ戦えないわよ!」
私が硬直していることに気付いた先生が肩を叩いたのではっとした。 するとルドルフはいきなり私の顎に手をかけた。
「思っていたよりも美形じゃねえかよ! てっきり大姉さんが相棒になれというぐらいだから武骨で頑丈な家具みたいな娘だと思っていたんだぜ! まあ、一緒にやろうじゃないか!」
武骨で頑丈な家具ってどんな意味なんだよ! 私は食いついてやりたかったが、エントリー締め切りを予告する鐘が鳴り始めたからやめた。それにしても自転車旅行を続けていた悠亮がこの世界に飛ばされてきたかのような想像をするほどよく似ていた。そして和夫さんにも! でも、こんな無礼な奴でなかったはずだ和夫さんは! もう少し紳士的だったし初対面でいきなり顎に指をかけるような真似をしたことなかったし!
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