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マネキン
マネキンたちの午後
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次の営業日。女主人のブティックのショーウインドのマネキンが一体増えた。そのマネキンは今どきの女子校生のような平均的な体形であったが、それがかえって好感度をもって受け入れられていた。マネキンが着ている服を訪れる客はいじくっていたが、時にはマネキンを触るものもいた。
「おばさま! このマネキンって人肌のぬくもりがあるし、なんかお人形さんのように柔らかいわね。いったいどんな素材でできているの?」
「それは企業秘密よ! でも案外中の人がいたりしてね。まあ四六時中マネキンのふりをしているなんてする人いないけどね」
女主人は笑ったが、そのマネキンはあの万引きした若い女を材料にしていた。だからすべての会話を聞いていたが、その会話はさらに絶望的にマネキンをさせた。そう中の人などいないのだ。今の私はマネキンそのものだったから。そう自分に言い聞かせるしかなかった。
そんな会話を聞いていたら厳つい顔をした警察官が入ってきた。女主人に写真を見せていたが、それはあの若い女の写真だった。
「すいません、この写真の女性は知りませんか? 先日このあたりの商店街で目撃された後行方知れずでして」
「彼女でしたら一昨日の夕方来ましたよ。なんやかんやと言いながら見ていましたよ。でも帰っていきましたよ西の方に向かって」
もちろんそれは嘘だった。いまマネキンに姿を変えられているからだ。しかし警察官は気づくはずもなかった。マネキンはマネキンにしか見えなかったから。どんなに自分はここよ! と心で泣き叫んでも動くことも出来ず聞こえることもなかった・・・
警察官が帰ったあと女主人はマネキンの股間のところを触っていた。下着を身に着けていたが触ったところで変化を見せなかったが、マネキンは意識あるものだと認識するのに充分な快楽を感じていた。その快楽だけがまだ自分が生きていると感じる手段であったからだ。
「とりあえず秋まではショーウインドでいてちょうだい。マネキンとして充分アピールしなさい。マネキンはマネキンらしく過ごすのよ」
そういって女主人はレジの方に行ってしまった。この日のショーウインドの午後は雨が激しく降るので客は誰一人いなかった。マネキンは外の様子を見て憂鬱になっていた。目線を変えることも出来ないし自分で動くことも出来ない。出来るのは路面を打ち付ける雨粒を見つめることだけだった。
マネキンはいつまでここにいなければいけないだろうと思っていた。その間もマネキンに変えた全身タイツが苛むように厳しく締め付ける感覚があった。それだけが自分はただのマネキンではなく人間であることを認識する唯一の方法だった、
はやく人間に戻りたいと心の中で叫んでいたが、ショーウインドの外から見れば、それは白いウィッグを被った大理石のような色彩を放つマネキンがサマースーツを颯爽と身に着けて立っているようにしか見えなかった。マネキンの中でどんなに意識があっても知る術は何人も持ち合わせていなかった。
なお、彼女のそのあとの運命について知るものは誰もいない・・・
「おばさま! このマネキンって人肌のぬくもりがあるし、なんかお人形さんのように柔らかいわね。いったいどんな素材でできているの?」
「それは企業秘密よ! でも案外中の人がいたりしてね。まあ四六時中マネキンのふりをしているなんてする人いないけどね」
女主人は笑ったが、そのマネキンはあの万引きした若い女を材料にしていた。だからすべての会話を聞いていたが、その会話はさらに絶望的にマネキンをさせた。そう中の人などいないのだ。今の私はマネキンそのものだったから。そう自分に言い聞かせるしかなかった。
そんな会話を聞いていたら厳つい顔をした警察官が入ってきた。女主人に写真を見せていたが、それはあの若い女の写真だった。
「すいません、この写真の女性は知りませんか? 先日このあたりの商店街で目撃された後行方知れずでして」
「彼女でしたら一昨日の夕方来ましたよ。なんやかんやと言いながら見ていましたよ。でも帰っていきましたよ西の方に向かって」
もちろんそれは嘘だった。いまマネキンに姿を変えられているからだ。しかし警察官は気づくはずもなかった。マネキンはマネキンにしか見えなかったから。どんなに自分はここよ! と心で泣き叫んでも動くことも出来ず聞こえることもなかった・・・
警察官が帰ったあと女主人はマネキンの股間のところを触っていた。下着を身に着けていたが触ったところで変化を見せなかったが、マネキンは意識あるものだと認識するのに充分な快楽を感じていた。その快楽だけがまだ自分が生きていると感じる手段であったからだ。
「とりあえず秋まではショーウインドでいてちょうだい。マネキンとして充分アピールしなさい。マネキンはマネキンらしく過ごすのよ」
そういって女主人はレジの方に行ってしまった。この日のショーウインドの午後は雨が激しく降るので客は誰一人いなかった。マネキンは外の様子を見て憂鬱になっていた。目線を変えることも出来ないし自分で動くことも出来ない。出来るのは路面を打ち付ける雨粒を見つめることだけだった。
マネキンはいつまでここにいなければいけないだろうと思っていた。その間もマネキンに変えた全身タイツが苛むように厳しく締め付ける感覚があった。それだけが自分はただのマネキンではなく人間であることを認識する唯一の方法だった、
はやく人間に戻りたいと心の中で叫んでいたが、ショーウインドの外から見れば、それは白いウィッグを被った大理石のような色彩を放つマネキンがサマースーツを颯爽と身に着けて立っているようにしか見えなかった。マネキンの中でどんなに意識があっても知る術は何人も持ち合わせていなかった。
なお、彼女のそのあとの運命について知るものは誰もいない・・・
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