【短編完結】追い出した婚約者に呪われた男

ジャン・幸田

文字の大きさ
1 / 5

【起】

しおりを挟む
 俺は清次郎だ! 大きな大店おおだなを経営している家の若旦那だ。金さえあれば女もなんともなる! そうであったが、邪魔な女がいた。婚約者の美羽だ! 大して美人じゃないし体つきも貧相だ。長所といえば真面目で愛想がいいことだが、俺の妻としては不合格だ!

 美羽は元々は別の商店主の娘で、女学校を卒業したら結婚する約束で婚約した。でも、そのあと不幸が彼女に降りかかった。実家の商店が潰れ、両親も病死したのだ。そのせいで家に居候する事になったが、結婚の話が進まなくなって、女学校を卒業してから家に就職して住み込みで働いていた。だから、婚約者ではなく従業員にしか思っていなかった。

 「旦那さま、おはようございます」

 美羽は挨拶してくるが、俺はいつも返事は手をあげるだけだった。面倒くさいからだ。それに婚約者といっても、何か特別な事はしなかった。だから従業員のなかには婚約者という事も知らない者もいるぐらいだ。

 「若旦那、そろそろ結婚されませんか? 若いから女の事遊びたいのはわかりますが、身を固めるのもよろしいことだと」

 番頭の亀吉はそういうが、俺は面倒くさかった。

 「美羽のことか? 今更だけど利点メリットなんてあるのか、あいつに」

 俺にとって婚約者の存在は邪魔だった。結婚する気にもならないのだ。もしかの時に嫁の実家に頼る事なんぞ出来ないし。最近では時々縁談が舞い込むようになったのだ。その中には魅惑的な容姿端麗で金回りの良い女もいた。美羽のように奉公人は無視したかった。

 「ありませんなあ、正直。若旦那にその気はないでしょ! 特別何か感情ありますか?」

 「あるか! あいつを抱く気にもならない! それに若女将になんて器でないだろ!」

 「そうですなあ・・・いくらでも良い相手はいますから若旦那には。そうだ! 一層の事婚約破棄しましょ!」


 「婚約破棄か? でも、慰謝料がいるだろう。それに、従業員として雇っているんだし。今のように人出不足の時代にクビに出来ないだろ。まあ、大した仕事をしていないし、いなくなっても構わないか」

 俺はそういったが、番頭の亀吉は悪知恵を俺に授けてくれた。

 「それは大丈夫ですよ若旦那! 美羽には大きな失敗の責任を取らせて辞めてもらいます! そのついでに婚約破棄をして追い出しましょう! そうすれば、結婚できます! うちにとってもそれが良いですから。やっぱり一生奉公人みたいな娘よりも、どこか良いお嬢様の方がいいですよ!」

 俺は亀吉に従い、美羽に罠を仕掛け婚約破棄することにした。それで俺は幸せになるはずだったが、それは大きな誤算を招くことにしかならなかった。美羽はこの店にとって座敷わらじみたいな存在だったから。座敷わらじを追い出した俺にはとんでもない事がまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

ブチ切れ公爵令嬢

Ryo-k
恋愛
突然の婚約破棄宣言に、公爵令嬢アレクサンドラ・ベルナールは、画面の限界に達した。 「うっさいな!! 少し黙れ! アホ王子!」 ※完結まで執筆済み

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

婚約破棄されたので、あなたの国に関税50%かけます~最終的には9割越えの悪魔~

常野夏子
恋愛
隣国カリオストの第一王子であり婚約者であったアルヴェルトに、突如国益を理由に婚約破棄されるリュシエンナ。 彼女は怒り狂い、国をも揺るがす復讐の一手を打った。 『本日より、カリオスト王国の全ての輸入品に対し、関税を現行の5倍とする』

【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう

水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。 しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。 マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。 マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。 そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。 しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。 怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。 そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。 そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

処理中です...