こども家庭株式会社

ジャン・幸田

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第一章 椎葉家の秘密

「長女」視点、父親評

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 わたしは椎葉カレンで中学一年生。うちの父親は本当にポンコツよ! うちの父親は椎葉良二で頭が禿げた中年で、とにかく動きが遅いの。家族から骨董品の置物みたいと揶揄されているわ。しかも人と関わるのが苦手で、仕事は農業をしている。本当に儲かっているのかわからないけど、どうやって家族8人の生活を支えているのか不思議で仕方ないわ。

 いま、両親と姉弟6人で生活しているけど、血がつながっていないらしいの。何故、つがっていないのに家族でいるのかは、「大人の事情」なんかといわれて教えてもらえないのよ。ただ、物心がついたときには一緒に生活していたので違和感はそれほど感じていないわ。

 それはともかく、父は本当にどんくさくてポンコツだわ! 動きは鈍いし農作業もあんまりにものんびりなのでイライラする! ちなみに果樹農家なので、多少遅くても構わないらしいわ。本当のところ知らないけど。

 夕食時に一家揃って食事するけど、いつも自分の世界に入っている感じなのよ。もし、将来結婚するなら選ばないタイプよ! あんまりしゃべらないけど、質問には答えてくれるけど、あまりそんな用事はないけど。でも、何かの用事でいない事もあるわ。

 母とは正式な夫婦らしいけど、あまり会話をするのは見たことないのよ。でも、私たち子供の事についてはよく相談しているけど。ちなみに二人の寝室は別々なので夜の夫婦生活なんてない・・・って、中学生が何故知っているのか内緒よ!

 ともかく、この家の中心は私たち子供のようだ。なぜ、そういえるかというと、周囲の大人たちの態度から分かるのよ。私たちの住んでいる街は同じように大勢の子供がいる家庭ばかりなの。幼いころから違和感はなかったけど、最近になって知ったのよ。この街の親たちは全員が「ことも家庭株式会社」に雇用されていることに・・・いったいそれってなに?
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