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マリーの予知夢

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 大きな広場に集まる群衆の前に粗暴な男に箱から引き出されたのは粗末なドレスを纏わされたいた娘がいた。少し前まで「貴族」とよばれ民衆を弾圧してきた支配階層の末端に属していた娘だ。その娘はマリーといい、民衆の弾圧に加担したと認定されていた。そのため「血塗られたマリー」や「吸血鬼令嬢マリー」などといわれており、まさに民衆からすれば悪役であった。

 「マリー、お前は軍務尚書の父にアドバイスし残虐行為を実行させたのは明白。親父の代わりにその身を弾圧され傷つき殺された民衆の復讐の正義の鉄槌を受けるがよい!」

 判事にでもなった気でいる男は高らかに演説した。その声に反応した民衆から「悪役令嬢は殺せ! そして償わせ!」と怒号が広場中に籠っていった。ここは人民法廷で結果などは最初から決まっていた。もちろん死刑しかなかった。人民の敵、革命軍の標的がそこにいる存在意義はそれしかなかった。そのとき、マリーは反論の機会を与えられた。しかし、その声は怒号の前では意味をなさなかった。ただ次のようなことをいったという。

 「私が何をしたというのですか? あんたたちの指導者を適切に対応しないとこの国が亡びるといっただけです父に! でも、そんな風に虐殺行為をしたわけではありません! なぜなら、これは・・・」

 その時、マリーの顎を判事がこん棒で殴ったため、そのあとは何もしゃべることはできなくなってしまった。顔面から流血しているのもおかまいなく、その扱いはゴミのようであった。さっさと処分すべき存在だから。そして彼女の首に縄が縛られ、そして一気に天空高くそびえる塔の上につるし上げられてしまった。哀れなマリーはその時散華しまった。全ての罪を着せられたままに・・・

 「マリー! お前はなんてことをしたんだ! いくら婚約破棄をされたからといって、自分の頭を自分で殴るなんて!」

 そうやって彼女を起こしてくれたのはハインツ・クラウゼ、マリーの父で帝国軍務尚書を務めていた。


 「ごめんなさい! おもわず・・・やってしまったしまったのよ、お父様」


 ほんのわずかな間気絶していたようだ。少し前、マリーは将来の皇太子候補の一人から婚約破棄を申し渡されてしまったのだ。理由は父のハインツがリベラル的だからという彼女自身に関係しないものだった。それで、父の執務室に置かれていた分厚い書籍で自分の頭を殴るという愚挙に及んでいたのだ。

 「お前にはすまないと思う。しかし、民衆の要求に背を向けひたすら保身に努めている保守的な連中を正さなければ、この国は終わってしまうからしかたないんだ。知っているだろ? 辺境惑星に追放されたルドルフが民衆をけしかけていることを。早く適切に対処しないといけないというのに、内政に目をつぶり政権維持の為にいたずらに国論を分裂させている守旧派どもにはな・・・」

 それまで、マリーは政治的な話題なんて興味がないので耳に入ってもあんまり考えたことはなかった。しかし、ある記憶が蘇ってきたのだ。それは「ユニヴァースウォーリアーズ零」を! でも、それってなによと思い出そうとしたら、一人の少女の記憶が蘇って来た。まさか前世のわたしなの? で、いったいこれはなんなのよ? そのとき、前世の記憶と知識が蘇って来た。

 「まさか、私を殺そうとしているのはルドルフなの?」

 この世界が前世で見たアニメの作品設定に酷似していることに気付いた瞬間だった。
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