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(6)決戦

死闘!(前編)

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 門田と静香の意識が薄らいでいくのがわかった。これは死んでいくっていうことなんだと感じていた。こんな醜い化物の身体になったのだから、死んでしまう事は幸せなことかもしれなかった。もう醜い姿から解放されるのだから。でも、その前にやらないといけないのは、纐纈とパクを始末する事だ! その二人を葬らなければ死んでも死にきれないということだ。でも、それを妨害しようとしている存在がいた。そいつらが!

 右の鎌足を失い、その断面からは体液が噴き出していた。弱ったとみたクモ人間とムカデ人間が襲って来た! クモ人間が糸を吐き出しカマキリ人間の動きを封じると、全長が6メートルありそうなムカデは蛇のように締め上げるようにしてきた。ムカデの無数の足は鋭い突起がありカマキリの外骨格を切り刻み始めた。それを防ごうとして残った左の鎌足で抵抗したが、そのときムカデの外骨格に打撃を与えた、そのとき静香の意識が悲鳴を上げた! もし人間のままだったら気絶していたに違いない光景だった!

 ムカデ人間は複数の人間の身体を前後にくっつけたものだった! 頭部こそないが手足と胴体は人間そのもののように思えた。纐纈の悪魔そのものの研究による犠牲者は想像以上に多いようだ!

 「なんてことなのよ! このムカデって人間の身体を合成したというの?」

 そのとき、ある漫画を思い出した。そいつは錬金術師で実績をあげるために何人もの子供を合成して新たなる怪人を生み出したという。もちろん正義の心をもつ主人公によって退治されたが、子供は元に戻らないというバットエンドだった。なぜなら主人公によって錬金術師と一緒に塵に返してしまったから・・・

 「そうだろう、どっちみち助からないだろうし、人間に戻れない俺らのように。それなら・・・」

 その時、カマキリ人間はクモの糸が絡んでいるにもかかわらず、ムカデ人間の猛攻撃をし始めた。どうやら二体とも人間のような知能は失っているようだった。攻撃力こそあっても動きは鈍く協調することはないようだった。

 「しかたねえなあ、やっぱ実験体としては失敗だったからな! まあ、準備できたからいいさ。さよならな! 化けども達! お前らは忘れないからな!」

 纐纈の下品な声がした方向を見ると、奴を乗せた小型ジェット機は滑走路の端に向って滑走し始めていた。このままでは逃げられてしまう! そう思っていたら、今度は自衛隊員によるロケット砲の攻撃が始まった! しかしムカデ人間と絡まっているのだから二体とも攻撃を受ける事になるので、ムカデ人間の身体が粉砕し、その内部から・・・無数の人体が飛び散っていった! その光景をみた自衛隊員たちは発狂したかのような絶叫を出していた。人間の生々しい手足が散乱し、臓器も飛び散り地獄の光景が広がっていたからだ。ムカデ人間の手足は本物の人間の手足を加工していたようだ!

 「なんて酷い事を! 許せねえ!」

 門田と静香の意識は怒りに燃えていたが、それを遮ろうとする者がいた。クモ人間だ!
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