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第伍章:神殿にて
134.夜の散歩
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神官のギウムが深刻な話をしていた同じ頃、アサミとタクヤは同じ床についていた。その後々も同じだったが、タクヤの上にアサミが横になっているいつもの姿勢だった。こうして身体は近くにいても、それ以上の事はなにもしなかった。そう契りを・・・
でも、本当はこうしているだけでも幸せだった。それは、まだホームレスとネコだった時と変わらぬことであった。再会してからずっとこうして過ごしたからだ。でもひとつ変な習慣があった。アサミが夜中になると目がさえるので、どこかに出かけてしまうのだ。
「アサミ、どこに行くんだ? こんな夜中に、まさか・・」
「そうじゃないのよ、トイレに行くのじゃないのよ。どうしても夜中になるとどこかに行きたくなるのよ。でもタクヤと一緒にいたくないわけじゃなくて」
アサミはそういっていたが、心当たりがあった。これって・・・ネコだった時の習慣が抜けていないのではないかなと。そうネコというのは夜行性なので出歩くものだと。
昔、実家で飼っていたデブネコのアリスも夜な夜な出かけて行っていた事があったけど、まさかそれと同じことなのかなと思っていた。それにしても若い娘・・・って、いっても本当は何歳なのかわからないけど・・・が、こうして夜中に歩くところにしては寂しいところだった。
ティアム山の山頂近くにある神殿は城壁のようなものに囲まれた敷地に礼拝堂と寄宿舎、それと温室などから構成されていたが、泊まっていたのは寄宿舎であった。そこから外に出ると夜の冷たい空気をまともに感じてしまった。
「それにしても、寂しいところだわ。これってスキー場みたい」
このとき、高校の時に修学旅行でスキー場に行った事を思い出した。いたずら好きの同級生にホテルの外に夜一緒に出たことがあったけど、その時もこんな気持ちになった。とにかく心細かった! それで寄宿舎を振り返ると三階の窓が明るかった。そこは神官のギウムの部屋のようだった。
「長居はしたくないわね、早く戻ろうね。あんまりタクヤを心配させることもしたくないし」
そう思って帰ろうとすると、なぜか暗闇になにかが動いたような気がした。そう何かが存在しているようだった。気色悪いと感じたアサミは急いで中に入った。
「なんだろうね、あれって? こんな山奥だから何か生き物でもいるのかな? でも、確かめに行きたくないわ、もう眠たいし」
アサミは寄宿舎の中に戻っていったが、その時の彼女の直観は間違っていなかった。それはハバス市からずっと尾行してきた者だった。ハバス市で魔道士審査官のダガー・フィルモに憑依蛾を憑りつかせた張本人だった。
でも、本当はこうしているだけでも幸せだった。それは、まだホームレスとネコだった時と変わらぬことであった。再会してからずっとこうして過ごしたからだ。でもひとつ変な習慣があった。アサミが夜中になると目がさえるので、どこかに出かけてしまうのだ。
「アサミ、どこに行くんだ? こんな夜中に、まさか・・」
「そうじゃないのよ、トイレに行くのじゃないのよ。どうしても夜中になるとどこかに行きたくなるのよ。でもタクヤと一緒にいたくないわけじゃなくて」
アサミはそういっていたが、心当たりがあった。これって・・・ネコだった時の習慣が抜けていないのではないかなと。そうネコというのは夜行性なので出歩くものだと。
昔、実家で飼っていたデブネコのアリスも夜な夜な出かけて行っていた事があったけど、まさかそれと同じことなのかなと思っていた。それにしても若い娘・・・って、いっても本当は何歳なのかわからないけど・・・が、こうして夜中に歩くところにしては寂しいところだった。
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「それにしても、寂しいところだわ。これってスキー場みたい」
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「長居はしたくないわね、早く戻ろうね。あんまりタクヤを心配させることもしたくないし」
そう思って帰ろうとすると、なぜか暗闇になにかが動いたような気がした。そう何かが存在しているようだった。気色悪いと感じたアサミは急いで中に入った。
「なんだろうね、あれって? こんな山奥だから何か生き物でもいるのかな? でも、確かめに行きたくないわ、もう眠たいし」
アサミは寄宿舎の中に戻っていったが、その時の彼女の直観は間違っていなかった。それはハバス市からずっと尾行してきた者だった。ハバス市で魔道士審査官のダガー・フィルモに憑依蛾を憑りつかせた張本人だった。
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