元ホームレス・タクヤとネコ耳娘アサミ魔道伝:Re

ジャン・幸田

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第一章:気が付いたらネコになっていたアサミ

023.思い出の海

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 永川亜佐美の人生はもう終わっているのに、その意識というか魂は再び戻って来ているのは不思議であったけど。いまわたしはその亜佐美のアルバムを傍らで見ていた。

  「亜佐美も強情だったよな。あれだけ成績も良くて論理的な文章を書けるからワシが勤務している法学部に入学しなさいと勧めたのに、結局教育学部の方に入学したんだからな。あの時、本気で怒って半年も口を聞かなかったなワシは」

  「父さんも姉さんも強情なんだから。でも仲直りしたきっかけは母さんが倒れたことだったよね。母さんも気が強かったから、我慢して体調が悪い事を隠していたから」

  「そうだな、亜佐美と母さんは性格がよく似ていたからな。でも、それはそれでよかったけど」

  二人はそういって私のことを話していた。こういった話は本人がいない場ですることであるけど、わたしは意思表示をすることが出来ないから同じことではあったけど。

  「そういえば父さん、姉さんが教育学部に行きたいといったきっかけを思い出したよ。ちょっと待っていてね」
  そういって奈緒美はアルバムの中ほどにあるページを開いた。そこは高校一年の夏、タクヤと出合ったときの写真だった。

  「そういえば姉さんってオクテだったから彼氏いなかったけど、わたしが知っている範囲で好意を寄せていたのは、教育実習で高校に来たこの人よ。ほら姉さんがアリスを引き取ったこの人よ」

  「たしか、この家に来た事があったな。それに年賀状も何通か。そういえば亜佐美が受け取った年賀状の中にあったな彼からのものも。一応、亡くなった事を通知したけど転居先不明で戻ってきたけど」

  「そうよ、姉さんって男友達は少なかったけどこの人とのツーショットのプリクラを大事に持っていたから覚えていたのよ、それにアリスの命の恩人だし」
  奈緒美はわたしが憑依しているアリスを抱き上げた。それにしてもアリスが余命少ないというのは本当のようで、身体が言う事を聞かないらしく、奈緒美も丁寧に労わるようにゆっくりとした動作だった。

  「そうか亜佐美にも好きな人がいたのか。てっきり亜佐美にボーイフレンドが出来ないまま逝ってしまったと思っていたけど」
  そういって父さんはかけていた眼鏡を外して眼を拭っていた。ふたりはその後も私の思い出に浸っていた。

  「父さん。ところで姉さんを奪った実行犯が特定されたと言っていたけど、誰なのよ?」

  奈緒美は父さんが持って帰ってきた書類の束から報告書が入った封筒を取り出してきた。そこには『オーシャニアン航空653便爆破事件』と書かれていた。そう亜佐美としての最期の瞬間乗っていたあの飛行機のことだった。
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