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七日目

もしかしてこれは?

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 その痛みは繰り返して起きるので嫌になりそうだった。しかし変な事に気付いた。わたしの身体が大きくなったような気がしてきたのだ。もちろん、ワニの中に閉じ込められたわたしの身体が大きくなったわけではないし。そう思っていたら変な事に気付いた。風を感じるのだ!

 風を感じる? わたしはワニの肉体に閉じ込められているはずなのに・・・まさか、これは!

 わたしは恐ろしい答えが頭に浮かんでいた。わたしの身体を包んでいるワニの組織と同化しつつあるんじゃないかと! そうなると、わたしの身体は・・・人間に戻れないんだという事なの?

 それが浮かんだ瞬間わたしは恐ろしくなった! もう人間に戻れないと! でも、同時に気付いたことがあった。わたしはどんな人間の女だったのよ! 

 若かったの? 歳をとっていたの? 性格はよかったの? 悪かったの? 可愛かったの? 可愛くなかったの? 学校に行っていたの? 結婚していたの?

 そう言った事を全て分からなくなっていたのだわたしは! そもそもワニ女にされた理由が分からなかった。

 ただの気まぐれでされたのかな? なにか悪いことをしてされたのか? それに目的はなになのよ!

 その答えをわたしの頭は知っているはずなのに・・・何も浮かぶことはなかった! わたしってバカになっているんだ、きっと・・・

 でも、知っていたからといって何ができるのだというのよ! ワニの中に女が閉じ込められているのを来園者に知らせる術などなかった!

 ワニの足では棒は持つこと出来ないし、それに砂地もない! だからメッセージを伝えるのは出来ないし、それに・・・そうだ字の書き方が分からなくなっているのだわたしは! 急速に人間として出来た事が出来なくなっているのだ!

 わたしはワニ! 動物園で口を大きく開けて暇そうにしている爬虫類! 時々水槽で泳いでいる。衣食住すべてが保障されている優雅な飼育動物でいるのも、悪くないかと・・・

 いやいや! 諦めてはいけないよ! このワニの身体から抜け出すことが出来るはずよきっと! そう信じるしかなかった!

 しかし、そうしている間にも、わたしの人間の身体とワニの身体は融合しつつあるようだった! いったいどうなるのよわたしは? しかし鈍重なるワニの身体はわたしの意志に反応することはなかった。反応して展示室から脱出しても・・・行くべきところが思い浮かばなくなっていた。
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