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掲示板でのことがあり、結局ヒロは王宮へと出向くことになった。
付き添いというか、説明兼紹介係として、【貴族の三男坊】も一緒である。
待ち合わせ場所は王宮前の外周路を挟んだ喫茶店となった。
外周路は平日もそうだが、休日もランニングや散歩をする人がいるので、ただ突っ立っていると邪魔になってしまうからだ。
加えて、今日はあの掲示板でのやり取りを見ていたスレ民らしき連中が、ソワソワと落ち着きなく歩き回っているのである。
普段屋内で好き勝手過ごしているというのに、こういう時は行動力があるのがスレ民というやつなのだろう。
あのスレでのやり取りのあと。
【貴族の三男坊】から農業ギルドを仲介して改めて、ヒロに接触があった。
と言っても、なにやら適当な理由をつけてヒロを紹介させたというほうが正しいかもしれない。
仕事用に農業ギルドに登録しているメールアドレス宛に、【貴族の三男坊】から直接連絡がきたのである。
そのメールには挨拶と、軽はずみな書き込みに対する謝罪がまず書かれていた。
そして、改めて王様と姫様に会ってほしいという旨と、その際念のために記憶を調査されることも記載されていた。
ここで断ったらどうなるんだろう?
そう思わなくもなかったが、やめた。
代わりに、いくつかの事を条件として提示した。
その条件の一つが、ヒロのことを公表しないというものだったりする。
平民であるヒロがこのような条件を王に対して出すのは無礼であるのは重々承知だが、ヒロとしても言いつけを破ったことを実家に知られるわけにはいかないのだ。
何故なら、母親がとても怖いからである。
こっちに開拓民として来るときも、説得するのに骨を折ったのだ。
今回のことがバレれば連れ戻されかねない。
何故なら、この国ではヒロは成人の扱いだが、故郷ではまだまだ子供の部類に入るのだから。
【貴族の三男坊】はこのことを納得してくれた。
そして、当日。
つまりは、今日。
ヒロと【貴族の三男坊】は初顔合わせとなったのである。
喫茶店に現れた【貴族の三男坊】は、緩くウェーブのかかった金髪の少年だった。
名前は、フェリオ・ルリオール。
侯爵家の三男坊とのことだ。
歳は、ヒロと同じ十八歳。
さて、そのフェリオと共に、ダンディーな男性と十代半ばほどの少女が店に入ってきた。
男性の方は、この聖ルミナリエ国を束ねるアンク王だ。
そして、少女はアンク王の娘であり、先日ヒロが助けた女の子だった。
名前は、コノハ・ヤマト・ルミナリエというらしい。
その名前を聞いて、ヒロは内心とても驚いていた。
コノハも、ミドルネームのヤマトも、ヒロの両親の名前と同じだったからだ。
それも、ヤマトというのはヒロの死んだ父親と同じ名前なのである。
(偶然ってあるんだなぁ)
ヒロはそう内心で呟いた。
一方、アンク王の方もヒロと、ヒロの名前を聞いて驚きを隠せなかった。
ちなみに、ヒロの本名はヒロ・ディケという。
もっと言うと、貴族でも無いのにミドルネームがあり、とても長かったりする。
「……そうか、君が。
なるほど」
なにやら、一方的に納得された。
そして、確認するかのように故郷について尋ねられた。
これは、世間話でもよくあることだ。
出身地を聞いて話の輪を広げるのである。
だから、ヒロは普通に答えた。
そして、少しだけ、本当に一瞬だけアンク王がなにか懐かしむように目を細めてヒロを見た。
その横で、コノハ姫が所在なさげにソワソワしている。
ヒロに話しかけたいのに、タイミングが掴めないのだ。
そんな中、頃合を見計らって口を開いたのは、フェリオだった。
「とりあえず、術士を召喚してもいいでしょうか?」
ヒロの記憶を確認するための魔法を使う術士、フェリオはそれを呼んでも良いか訊ねる。
すると、アンク王は簡潔に返した。
「必要ない」
これには、フェリオもそうだがコノハ姫も驚いた。
「話を聞いて、そして今彼に直接会って納得できた。
邪龍退治も、今回の娘の件も、ヒロ君が何とかしてくれたのなら得心が行く」
その言葉に呆気に取られたのは、他の誰でもない。
ヒロ自身だった。
「いや、あの!
確認は大事だと思いますよ?
人違いだったり、もしかしたら俺が嘘をついている可能性だってありますよ!?」
思わず、ヒロはそう口にした。
すると、少しだけ、また懐かしそうな表情をしてアンク王はヒロへ言った。
「……古い友人に、君と同じ故郷の出身者がいたんだ。
だから、という言い方は変だけれどよく知っているんだ」
「は、はぁ」
「君はその友人によく似ている。
それで、確信した。
君に娘の護衛を依頼したい」
なんだ、なるほどなぁ。
誰かは知らないけど、王様と知り合いの人が村にいるのかぁ。
普通にすごいなぁ、だれだろう?
そんな人居たら、普通に噂になってるはずなんだけど。
と、ヒロは納得しかけていたが、更なる爆弾を投げつけられ、一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。
ただ、一つ幸運だったのはまだドリンクを注文していなかったことだ。
仮に飲み物を口に含んでいたら、目の前の王族に思いっきり吹き出していたことだろう。
それはフェリオも同じだった。
しかし、ただ一人、コノハ姫だけはどこか安心したように父親とヒロを交互に見て、顔を綻ばせたのだった。
付き添いというか、説明兼紹介係として、【貴族の三男坊】も一緒である。
待ち合わせ場所は王宮前の外周路を挟んだ喫茶店となった。
外周路は平日もそうだが、休日もランニングや散歩をする人がいるので、ただ突っ立っていると邪魔になってしまうからだ。
加えて、今日はあの掲示板でのやり取りを見ていたスレ民らしき連中が、ソワソワと落ち着きなく歩き回っているのである。
普段屋内で好き勝手過ごしているというのに、こういう時は行動力があるのがスレ民というやつなのだろう。
あのスレでのやり取りのあと。
【貴族の三男坊】から農業ギルドを仲介して改めて、ヒロに接触があった。
と言っても、なにやら適当な理由をつけてヒロを紹介させたというほうが正しいかもしれない。
仕事用に農業ギルドに登録しているメールアドレス宛に、【貴族の三男坊】から直接連絡がきたのである。
そのメールには挨拶と、軽はずみな書き込みに対する謝罪がまず書かれていた。
そして、改めて王様と姫様に会ってほしいという旨と、その際念のために記憶を調査されることも記載されていた。
ここで断ったらどうなるんだろう?
そう思わなくもなかったが、やめた。
代わりに、いくつかの事を条件として提示した。
その条件の一つが、ヒロのことを公表しないというものだったりする。
平民であるヒロがこのような条件を王に対して出すのは無礼であるのは重々承知だが、ヒロとしても言いつけを破ったことを実家に知られるわけにはいかないのだ。
何故なら、母親がとても怖いからである。
こっちに開拓民として来るときも、説得するのに骨を折ったのだ。
今回のことがバレれば連れ戻されかねない。
何故なら、この国ではヒロは成人の扱いだが、故郷ではまだまだ子供の部類に入るのだから。
【貴族の三男坊】はこのことを納得してくれた。
そして、当日。
つまりは、今日。
ヒロと【貴族の三男坊】は初顔合わせとなったのである。
喫茶店に現れた【貴族の三男坊】は、緩くウェーブのかかった金髪の少年だった。
名前は、フェリオ・ルリオール。
侯爵家の三男坊とのことだ。
歳は、ヒロと同じ十八歳。
さて、そのフェリオと共に、ダンディーな男性と十代半ばほどの少女が店に入ってきた。
男性の方は、この聖ルミナリエ国を束ねるアンク王だ。
そして、少女はアンク王の娘であり、先日ヒロが助けた女の子だった。
名前は、コノハ・ヤマト・ルミナリエというらしい。
その名前を聞いて、ヒロは内心とても驚いていた。
コノハも、ミドルネームのヤマトも、ヒロの両親の名前と同じだったからだ。
それも、ヤマトというのはヒロの死んだ父親と同じ名前なのである。
(偶然ってあるんだなぁ)
ヒロはそう内心で呟いた。
一方、アンク王の方もヒロと、ヒロの名前を聞いて驚きを隠せなかった。
ちなみに、ヒロの本名はヒロ・ディケという。
もっと言うと、貴族でも無いのにミドルネームがあり、とても長かったりする。
「……そうか、君が。
なるほど」
なにやら、一方的に納得された。
そして、確認するかのように故郷について尋ねられた。
これは、世間話でもよくあることだ。
出身地を聞いて話の輪を広げるのである。
だから、ヒロは普通に答えた。
そして、少しだけ、本当に一瞬だけアンク王がなにか懐かしむように目を細めてヒロを見た。
その横で、コノハ姫が所在なさげにソワソワしている。
ヒロに話しかけたいのに、タイミングが掴めないのだ。
そんな中、頃合を見計らって口を開いたのは、フェリオだった。
「とりあえず、術士を召喚してもいいでしょうか?」
ヒロの記憶を確認するための魔法を使う術士、フェリオはそれを呼んでも良いか訊ねる。
すると、アンク王は簡潔に返した。
「必要ない」
これには、フェリオもそうだがコノハ姫も驚いた。
「話を聞いて、そして今彼に直接会って納得できた。
邪龍退治も、今回の娘の件も、ヒロ君が何とかしてくれたのなら得心が行く」
その言葉に呆気に取られたのは、他の誰でもない。
ヒロ自身だった。
「いや、あの!
確認は大事だと思いますよ?
人違いだったり、もしかしたら俺が嘘をついている可能性だってありますよ!?」
思わず、ヒロはそう口にした。
すると、少しだけ、また懐かしそうな表情をしてアンク王はヒロへ言った。
「……古い友人に、君と同じ故郷の出身者がいたんだ。
だから、という言い方は変だけれどよく知っているんだ」
「は、はぁ」
「君はその友人によく似ている。
それで、確信した。
君に娘の護衛を依頼したい」
なんだ、なるほどなぁ。
誰かは知らないけど、王様と知り合いの人が村にいるのかぁ。
普通にすごいなぁ、だれだろう?
そんな人居たら、普通に噂になってるはずなんだけど。
と、ヒロは納得しかけていたが、更なる爆弾を投げつけられ、一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。
ただ、一つ幸運だったのはまだドリンクを注文していなかったことだ。
仮に飲み物を口に含んでいたら、目の前の王族に思いっきり吹き出していたことだろう。
それはフェリオも同じだった。
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