【教えて】聖杯を探しています【ください】

一樹

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二回目、数時間ぶりのダイナミックお邪魔します

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それから、僕は考察厨さん達の指示に従って手帳作りをした。
同じ内容ではあるものの、部分的に違う箇所がある。
盗まれてもいい方には嘘が書いてあるのだ。
嘘を書いた方には、目印として勇者が使っていた、そして記念館にも使われているマークを描いておいた。
大きな長方形の中に、丸を描いただけのシンプルなものだ。
これも、考察厨さんの提案だった。

それが一段落する。
ちょうど見計らったように、食事が届けられた。
届けてくれたのは、アンジュだ。
どうやら、彼女が僕の世話係で確定のようだ。

謎解きに関して、進捗を聞かれたので、

「もう少しで解けるかも」

とだけ答えた。
そして、マークをつけた方の手帳を見せた。
実は、これらも考察厨さんに指示されていた。
あくまで、もう一冊の手帳は予備という扱いで、アンジュには見せないようにした。
何か聞かれても、考察厨さんはこれこれこういう風に言えばいい、と事細かく指示出しをしてくれた。
しかし、アンジュは手帳が二冊ある理由を深く考えなかったらしい。
もしかしたら、何かしら考えてはいるのかもしれないけれど、頭の中が読める訳でもない僕にはわからなかった。

「そう、解けたら教えてね」

会話はそれで終わりだった。
アンジュは、僕が食事をとるのを黙ってみていた。
しかし、何も言わなかった。
こちらから何か言うべきだろうか、とも考えたが、そもそも向こうはそんなものを期待していないのは分かりきっていた。
だから、何も喋らず黙々と僕は食事をした。
食べ終えると、その食器を乗せた盆を持ってアンジュは去っていった。
その時、チラリと部屋の外が見えた。
2人ほど、見張りらしき者が立っていた。
逃げようとは考えないほうがいいらしい。

僕は、掲示板を出して手帳に関する作業が終わったことを伝えた。
ついでに、この短時間でのアンジュとのやり取りも報告しておく。
これは、報連相が大事だから、と考察厨さん含めた色んな人が書き込んでいたからだ。
それから、考察厨さん達は【えと】に関して僕にレクチャーしてくれた。
【干支】と書くらしい。
そして、それはざっくりというと十二匹の動物が充てられているのだとか。
ネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、ドラゴン、ヘビ、馬、羊、猿、鳥、犬、イノシシ。
これら十二匹の動物が干支に含まれているのだという。

これらが、方位、方角にあてられているのだとか。
たしかに、桃太郎のお供である動物がいた。
猿、鳥、犬。
この三匹があてはめられた方角とは反対方向に位置するのが、ドラゴン、ウサギ、トラだと言うのだ。
ここで、考察厨さんが聞いてきた。

【ドラゴン、ウサギ、トラに当てはまるだろう、勇者がテイムしたモンスター。
ドラゴンは実家にいた時にテイムしたらしいが、ウサギとトラは、《いつ》、《どこで》テイムしたかわかるか?】

僕は知っていた。
勇者は、全て国内でモンスターを仲間にしている。
というより、王都内と言った方が正しい。
ドラゴンをテイムしたのは、生家近く。
それも引越しをする前だから、最初の生家、あの竹林のあった場所の近くだったはずだ。
まだ子供だった勇者は、遊び相手でもあった小間使い(作品によっては幼馴染みや聖女)と一緒にピクニックに出かけた先で、怪我をしたドラゴンを見つけた。
それを助けたことにより、懐かれ、飼うことになったのだ。
同じような理由でフライキャットとキングラビットも、仲間にしたとされている。
それらを書き込んで、説明する。
補足として、でもどこで仲間にしたのか、ということは作品によってまちまちだと書いた。
すると、考察厨さんは、こう返してきた。

【いや、王都内でテイムしたってことがわかれば十分だ】

考察厨さんが、考えを書き込んでいく。

【なんとなくだけど、聖杯は王国内に隠されている気がする。
領地内って意味だ。
勇者がどれだけのことを考えて、この謎を作ったのかはわからないけど。
少なくとも、人間の仲間と自分がテイムしたモンスターの種類から干支に関連付けられることに気づいたのはたしかだろう。
で、何度も説明してるがこの干支ってのは方角を示すときに用いられてる。
まぁ、正確には時間とか、年とかもだけど。
今は関係ないから省く。

提示された二個目の謎の文章を確認してみろ】

僕は、正しい方の手帳を出して、そこに挟んでおいた二個目の謎が書かれた紙を取り出した。

――我が、お供のいる方角を順に巡れ――

同じ文言を、考察厨は書き込んでいる。

【わざわざ、“方角”と書いてある。
つまり、実際出会った、テイムした場所じゃなくて、その方角から順番に巡れってことなのかもしれない。
もしくは、調べろってことなのかもな。
パーシヴァル、王国の地図は用意できるか?】

なるほどなー、と読んでいたらそう聞かれたので、少し焦ってしまった。
けれどもすぐに行動した。
部屋の中から、外に立っているであろう見張りの人たちへアンジュを呼んで欲しいと声をかけたのだ。
用意して欲しいものがある、とも伝えた。
この部屋には鍵が掛かっているから、中からは開けられない。
しかも、呼び鈴のような物もないから、こうするしかないのだ。
すぐに、

「待っていろ」

と返事があった。
しばらくすると、アンジュがやってきた。
王国内の地図が欲しいと言うと、すぐに用意してくれた。
またすぐに部屋を出るのかと思いきや、アンジュはそのままそこに居座った。
僕は、テーブルに地図を広げつつ書き込みをした。
アンジュの監視の目があることも伝える。

【構わない、気にするな】

短く、考察厨さんはそれだけ書き込んだ。
続いて、手帳にも書き写した干支が書き込まれている方位図を貼り付けた。
これを見ながら、謎が示している場所を探せということらしい。

【何しろ、俺たちにはそっちの知識がないからな。
勇者や勇者がテイムしたモンスターに縁のある場所を知ってるのは、パーシヴァルだ。
だから、その方角にある候補地を探し出せ】

ということらしい。
考察厨さん曰く、ただ闇雲に指定された方角を巡ったところで何も起きない、と考えているということだ。
僕は言われるまま、地図と方位図を見比べ、にらめっこする。
同時に、今まで記憶していた勇者関連の知識も出来るだけ思い出そうとした。
いくつか候補地らしき場所はあったが、決定打に欠けた。
なので、今手元にある小説と回顧録も引っ張り出して地図の横に並べた。
回顧録を見た、アンジュが、

「これ、勇者の日記??
どこで手に入れたの?」

「ギフト発現の儀式の後、記念館の館長さんにもらった」

というか、ずっと持っていたのに彼女は気づいていなかったようだ。

「館長さんは、【スレ民】のギフトが与えられた人には渡してるって言ってた」

最も、僕以降に渡されるのはレプリカらしいけれど。
その言葉は呑み込んだ。
アンジュは、回顧録を覗き込んで目を丸くした。

「……貴方、これ読めるの?」

「…………」

なんと答えたものか、僕は迷った。
正直に話していいものか。
話したら話したで、また嘘つき呼ばわりされるかもしれない。

「僕の与えられたギフト、【スレ民】があると読めるみたいだよ。
だから渡してるんじゃないかな」

「…………そう」

アンジュは、なにやら難しそうな顔をしていた。
もしかしたら、ギフト【スレ民】については、大神殿側もよく分かっていないのかもしれない。
知ってても、このギフトがあれば聖杯にたどり着ける程度なのかもしれない。
でも、知っているのがその程度だろうと聖杯をみつけられるなら構わない、と考えて僕を迎えに来たのかもしれない。

黙々と地図の中から謎に関する候補地を探す。
そんな僕に、アンジュは聞いてきた。

「ねぇ、貴方のギフトは条件さえ揃えば与えられるのよね?」

僕は地図からアンジュに視線を移した。

「そうだよ」

「その条件って」

アンジュの言葉は途中で止まった。
バタバタと慌てたような足音が聞こえてきたかと思ったら、僕が監禁されている部屋の扉が勢いよく開いた。
現れたのは、血まみれの男性だった。
その男性はアンジュに向かってこう叫んだ。

「魔族が攻めてきた!!」

見張り役の戦士の格好をした男たちが、顔色を変えた。
直後、あちこちで爆発音が鳴り響く。

僕はすぐに地図と回顧録、小説、手帳を鞄に突っ込んだ。
部屋の窓ははめ殺しで開かない。
逃げたいけれど、アンジュがいるので下手に動けない。
それに建物の構造もよくわかっていない。
無闇矢鱈に逃げれば迷子になることはわかりきっていた。
アンジュが叫んだ。

「なんで魔族が?!」

魔王が率いていた魔王軍。
そして魔王が支配し率いていた民、魔族。
彼らは現在、この大陸の端っこに小さな国を作り存在している。
けれど、人間との歴史が歴史なので嫌われているのも事実だ。
魔族は人間と同等に扱ってもらえず、なんなら魔王討伐後、神から褒美として聖杯の力――万能の力を与えられた勇者によって弱体化されていた。
それでも、まだ魔族の方が強いのだけれど。

勇者を研究するにあたり、勇者の仲間についてもだけれど敵対していた魔王についても、僕なりに調べていた。
調べるのにはだいぶ苦労した。
何しろ、歴史は勝者側で語られるから。
少しでも魔族側に好印象を持つだろう記録等は、すべて焼かれてしまっていた。
と言っても、これは勇者が指示したことではなく民衆が勝手にやったことだとされている。
しかし、そんなことよりも僕の脳裏に閃くものがあった。
この聖杯探しゲームだ。
このゲームは、とされている。
それこそ、魔族でも参加可能なのだ。
魔族は勇者に負けて以降、わざわざ人間側に喧嘩をふっかけるようなことは避けてきた。
つまり、この千年間表向きは大人しくしていたのだ。

今、僕が監禁されているここが、どこかはわからない。
けれど、ここを襲撃してきた理由には心当たりがあった。
スコアボードが更新され、大神殿が落ちこぼれで嘘つきとしてある意味有名な子供を一人さらった。
大神殿が動いたという事実は、少なくとも情報屋の世界では噂になるはずだ。
察しがいい者なら関連付けても不思議ではないだろう。

まぁ、僕の考えすぎかもしれないけれど。
考え過ぎで言うのなら、魔族の目的は僕ということになる。
アンジュがイライラと怒鳴って指示を出していた。

この子はイレギュラーな事態を引き起こすのは得意だけれど、それを起こされるのは苦手なタイプなんだな。
見張り役達が血まみれの男性の指さした方に走っていく。
アンジュにも、

「早く!!ここに向かってる!!」

そう叫んだ。
僕は、その男性をじいっと見た。
なんだろう、こういうシチュ読んだことある。
意外とこういう時でも、僕の頭は妙に冷えていてそんなことを考えてしまった。
アンジュは、血まみれの男性に急かされるまま、部屋を出た。
瞬間、血まみれの男性がその背中を蹴飛ばした。
それも勢いよく、蹴飛ばした。
アンジュは顔から反対側の壁にぶち当たり、倒れた。
鼻血が出ていた。
けれどそれ以上に何が起きたのかわからない、という顔をしていた。
倒れた彼女の顔面に、血まみれの男は拳を叩き込んで気絶させてしまう。
その間にも、爆発音や怒声があちこちから聞こえてくる。
男性は、部屋に入ると僕を見てきた。

「見つけた」

思ったより若かった。
二十代前半くらいの男性だ。

「来てもらうぞ」

そう言われ、思わず脳裏に【ダイナミックお邪魔します、第二弾】という言葉が浮かんだ。
男性は、僕につかつかと歩み寄って来た。
かと思ったら、僕を軽々と肩に乗せてしまう。
僕はされるがままだ。

「思った以上に大人しいな」

さすがに怪訝な顔で言われてしまう。
僕は、

「二度目ですから」

そう答えた。
一日のうちに、二度ダイナミックお邪魔しますをされて移動させられるというのは中々できる体験ではない。
そこにきて、この大騒ぎである。
たぶん脳みそが現状を理解、処理するのに時間がかかっているのかもしれない。
男性はなにがおかしかったのか、ケラケラ笑った後正体を現した。
人間の姿は、魔法で化けていただけらしい。
そこには、魔族の青年の顔があった。

「そのまま大人しくしててくれよ、少年?」

言いつつ、魔族の青年は魔法陣を展開させた。
部屋の壁が破壊される。
外には見事な満月が出ていた。
青年は破壊した穴から飛び出した。
外に出てわかったのだけれど、僕がいたのはなんの捻りもなく大神殿の中だったらしい。
見知った荘厳な建物が月光に照らされていた。

青年はなんなく地面に着地すると、走り出してあっという間に大神殿から離れてしまった。
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