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学園生活+冒険者活動

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農業ギルドの建物はすぐに見つかった。
建物に入り、受付でギルドカードを見せる。
農業ギルドで買い物をする場合は、ギルド会員であることを示すと少し安くなるのだ。
村では、定期的にギルド職員がきて、集会所で出張ギルドなるものを開いてくれていた。
村を出たことがないウカノにとっては、ちゃんとした農業ギルドの建物に入るのはこれが初めてだった。
そういえば、長年村に来ていたあのギルド職員は元気だろうか。
去年、王都のギルドに栄転することになったと言っていた。
次の月には、違う職員が村に来ていたなと考えていたら、

「ウカノ・サートゥルヌスさん……?
ひょっとしてセントフィル村の、サートゥルヌスさんですか?」

受付嬢に、名前を確認される。

(そういえば旧姓のままだった)

そんなことを考えながら、ウカノは頷いた。
受付嬢は、ウカノを真剣な表情で見つめた後、

「こちらへ」

何故か建物の奥へと案内される。
ウカノは不思議に思いながらも、それについていく。
通されたのは、奥にある一室だった。

(ギルド長執務室?)

この農業ギルドを取り仕切っているギルド長が仕事をする部屋だ。
なんで、ここに?
そう不思議がっていると、部屋の中へ入るよう言われる。
ウカノは素直にそれに従った。

「ギルド長、前にお話されていた方が見えましたのでお連れしました」

淡々と言うだけ言って、受付嬢は部屋を出ていった。
部屋の扉が閉まる。
ウカノはギルド長を見た。
それは、女性だった。
茶髪に同系色の瞳。
少し幼さが残っている、二十歳前後のスーツ姿の女性が、ウカノを見た。

「ウ、うう、ウカノ君だぁぁああ!!!!
本当に王都にきてたんだぁぁあ!!!!
結婚してぇええええ!!!!」

執務机を飛び越えて、抱きついてきたのでウカノはそれをサラリと避ける。
ギルド長は床とキスする羽目になってしまった。

「お久しぶりです、エリさん。
朝から元気ですね」

「うう、ウカノ君の愛が痛い」

なんて言ってくるギルド長エリ。
この人こそ、かつてウカノのいた村に来ていたギルド職員だった。
ウカノは何故かエリにとても気にいられているのだ。

「俺の愛じゃなくて、床からの愛だと思いますよ」

「痛くていいから、私と結婚して。
もう15歳になったんでしょ?
成人だよね?
結婚して」

「嫌です。
それにしても、栄転したとは聞いてましたが。
ギルド長になってたんですねぇ、おめでとうございます。
その地位なら引く手数多じゃないですか。
それにエリさん美人だし、選り取りみどりでしょ。
あと農家の長男と一緒になっても苦労しますよ、確実に」

長男夫婦より次男三男夫婦の方が、まだ表向きは上手くやれてるように見える。
それでも【農家の嫁】というレッテルは貼られるが。
実際はどうか知らない。
けれど、長男の嫁よりも次男三男の嫁の方が精神的には楽なはずだ。
とくに街育ちの人間の場合、農家の長男と一緒になってもその後の人生で幸せそうにしている人は、少ないように感じられる。
ウカノの周辺だとそういう大人たちが多かった。
そこでエリが首を傾げた。

「いや、もうウカノ君は別の家の子でしょ?
聞いてるよ、お金持ちの家の子になったって」

(知ってたか)

ウカノは冗談めかして返す。

「堂々とした玉の輿目的ですか?」

「いやいや、私はウカノ君の事が普通に好きなんだよ。
前はさすがに犯罪だったから手を出さなかったけどねぇ。
そういえば、聖エルリア学園に入学したとも風の噂で聞いたけど、今日平日だよね?
学校は?」

「クラスメイトと喧嘩して謹慎中です」

「え?!」

「まぁ、喧嘩両成敗ってことで相手も謹慎らしいです。
そういえば、あの子病院行ったのかな」

「何それ、詳しくきかせて!!」

楽しそうにエリは目を輝かせた。
しかし、それには答えずウカノは逆に訊ねた。

「それよりも、なんで俺はここに通されたんですかね?」

「え、そんなの私が頼んでたから。
ウカノ君来たら、執務室に通してねって」

「俺になんか用があったんですか?求婚以外で?」

「まぁ、うん。協力してほしいことがあるの。
もしも、来なかったらこっちから調べて君のとこに行くつもりではあった。
というか、昨日から探偵やとって君の住所調べてたところなんだけど」

「怖いんですけど」

「まぁ、いいから聞いて。
実はね、スタンピードが起こりそうなの。
それも、南部の方で」

「南部??」

そういえば、ちょっと前に旅の商人が来て、大きな河が大雨で決壊して切れて田んぼが壊滅したとか言っていたな、とウカノは思い出した。

「1ヶ月くらい前に大洪水が起きて、被害が甚大なんだけど。
そこに来て、一週間前に地震が起きたものだから、本当に大変なことになってて。
大陸中の農業ギルドからも人を派遣してるんだけど、物資もなにもかも追いつかない状態でね。
そこに来て一昨日深夜に、近くの大森林地区で魔物のスタンピードの兆候が見られるって報告が入って……」

そこまで言って、エリは言葉を切ると執務机に置いてあった椅子に腰掛けて、顔を両手で覆ったかと思うと、

「もう疲れた、やすみたい」

ガチトーンで泣き言を口にした。
それでウカノは大体のことを察することが出来た。

「あー、俺にスタンピードが起こる前にモンスターの数を減らしてほしい、と?
兆候が見えてるってことは、スタンピードを指揮するドラゴンでも見つかりました?
それとも、場所の特定ができたのか」

「うん、まぁそんなとこ。
お願い、できるかな?」

よくよく見れば、エリは化粧で隈を隠していることに気づいた。
諸々の対処で寝ていないのは本当なのだろう。

「いいですよ、エリさんと俺の仲だし」

「ありがとう!!結婚して!」

「お断りします」
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