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2章 アンチもいれば信者もいる男

ブロックする方も大変

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 天樹会とはこの地方都市に根付く土着信仰が元となった宗教法人らしい。

 宗教としては古く江戸から続く。ただ、歴史の割に規模は小さいらしく、この地方都市から一歩外へでたら全く聞かなくなるようなものだ。活動内容もまっとうで、ボランティア活動やお悩み相談がメイン。昔問題になっていたという怪しい壺を買わせたり、寄付金を強要したり、度を超えた勧誘活動などは行っていない。そういうことになっている。

 俺hあモデルくんから誘われた天樹会について自宅で調べていた。

 誘われたあと「パンフレットとか持ってきたからあとで見てね」と渡されるだけ渡され、モデルくんは帰っていった。隣の桜庭がヤバい奴を見る目になっていたから逃げただけかもしれない。

 バイトが終わってから家でどんなあくどいことをしているのか少し調べてみることにした。公式団体から出している情報はクリーンなものばかり。ここまでは予想通り。被害に遭った人の情報を見つけてからが本番だ。しかし、どういうわけか見つからなかった。

 健全経営を旨としているのか、寄付は基本無し。何かあったらお気持ちだけを貰う程度らしい。大本を辿れば神道にいきつく土着信仰ゆえ、経典も具体的な教えもない。実態としては町の顔役みたいなものらしい。

 一つ特殊な点を挙げるとするならば、天樹会のトップは神様ご本人らしい。他のカルト宗教では、神様や教祖の生まれ変わりとか、お告げを聞いたとか、教祖の血筋で誤魔化しているところを、真っ正面から殴りにいったという点だ。いっそ清々しさすら感じる。

 小一時間探して、怪しいところは見つからなかった。

 きっと細々と続いてきた神社みたいなものなのだろう。

 だからといって誘いを受ける気はさらさらない。

 度を超えた勧誘活動はないという話なのにモデルくんが勧誘してきたことを鑑みると、地下で活動している団体なのかもしれない。正直、信用できるまで至っていない。

 ちなみに配信前の準備をしていた妹にこの話をしたところ、心配を装った探りを入れてきた。別に身内に隠すようなことでもないので一緒に調べてもらった。

「断り続けるのが安定だね」

 妹の意見に同意すると、続けて訊かれた。

「配信でネタにしていい?」

 名称などを出さないことを条件に許可を出した。妹は阿呆なので何かの拍子で言わないか気になり、珍しく配信を見てみることにした。たしかに名前などは言わないまま面白おかしくネタにしてくれた。身内の不幸話ということで俺が笑われるのは想定通りで許容内であったが、俺へのアンチが妹の配信に毎度毎度へばりついているらしく俺の不幸に口汚くして喜ぶ様に妹のファンがドン引きしていた。

 どうやら妹の配信の視聴者は、純粋なファンとガチ恋勢、兄貴アンチ、その他で構成されているらしい。なかなかの混沌具合だ。

 配信後、妹にネタにしない方がよかったのではと話しかけてみる。

 妹は溜息交じりに首の後ろを掻く。

「にーちゃんネタはみんなからまた聞きたいって意見は出るけど、アンチの喜び方がねー。もうちょっとモラルを守った喜び方して欲しいし。酷い人はコメントブロックしてるけどファンめっちゃ増えてるからキリないし」

 互いに良い解決策などないことはわかりきっていたため、その話はそれで打ち切った。





 翌日の講義後、モデルくんから声を掛けられた。

 宗教勧誘の件だろう。しかし、彼の口から出たのは想像していないものだった。

「昨日、妹さんが勧誘の件ネタにしてたでしょ。うちのとこはそんなんじゃないってば

 いつも通りの柔らかい笑顔を携えていたのが、恐ろしかった。
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