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夏季休暇。美女、襲来後
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夕暮れ時。
夏季休暇中の厨房は、通常より人手が少なく、戦場さながらだった。
だが、そこに金髪の美少女……ではなく、美少年のルシェファンが手伝うことによって、厨房にはいつも通りの雰囲気が保たれる。
「ルシェ、こっちは?」
「はいはーい。あぁそれは、もう揚げちゃって下さい。火傷しないようにね」
料理長が休暇を取っているこの日、手伝いと言いつつ指揮を執っているのは完全にルシェファンだ。
彼が入団して以来、夏場でも厨房が回るようになり、料理長も安心して休みを取れるようになったのは有名な話だった。
一方その頃、食堂の客席では――。
「おう、婿殿!」
「さっきの面会、見たぞ。ルシェファンの母上と叔母上、美人すぎ」
「隣国の王弟殿下の正妃様にまでちゃんと挨拶してたな!」
団員たちは、昼間の「美人三姉妹(真ん中男)」騒動の余韻が抜けきれず、からかい半分でシェガランをそう呼んでいた。
しかし当の本人は、むしろ胸を張って答える。
「おう、婿殿で合ってる」
「否定しねぇのかよ!?」
「だって俺、ルシェんとこに、婿入りする予定だしな」
「予定って、婚約してたのか?!」
「了承もらってる」
「……え、ほんと?」
「ルシェの母上公認だし?」
周囲の団員たちは、妙な沈黙の後、一斉に吹き出した。
そこへ、大皿を抱えたルシェファンが厨房から現れた。
軽やかに料理を並べ、手際よく配膳をこなす。
そんな彼に、シェガランはすかさず声をかけた。
「なあ婿殿って呼ばれてるんだけど、いいよな?」
「よくない」
「でもエルランティア母上公認だぞ?」
「……母上がそう言っても、俺は許可してない」
「えー、この前のキスOK条件とかあったのに?」
「今それ関係ない!」
周囲の団員は騒然とした。
「キス!?」「条件!?」と、耳ざとく拾った単語に反応してざわつく。
厨房からこっそりその様子を見ていた副料理長が苦笑していた。
「……あの二人がいる限り、厨房も食堂も退屈しねぇな」
そしてこの夜、ルシェファンは厨房業務を終えてもなお、「婿殿事件」と「条件付きキス事件」を団員たちに根掘り葉掘りされ続けることになるのだった。
夏季休暇中の厨房は、通常より人手が少なく、戦場さながらだった。
だが、そこに金髪の美少女……ではなく、美少年のルシェファンが手伝うことによって、厨房にはいつも通りの雰囲気が保たれる。
「ルシェ、こっちは?」
「はいはーい。あぁそれは、もう揚げちゃって下さい。火傷しないようにね」
料理長が休暇を取っているこの日、手伝いと言いつつ指揮を執っているのは完全にルシェファンだ。
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しかし当の本人は、むしろ胸を張って答える。
「おう、婿殿で合ってる」
「否定しねぇのかよ!?」
「だって俺、ルシェんとこに、婿入りする予定だしな」
「予定って、婚約してたのか?!」
「了承もらってる」
「……え、ほんと?」
「ルシェの母上公認だし?」
周囲の団員たちは、妙な沈黙の後、一斉に吹き出した。
そこへ、大皿を抱えたルシェファンが厨房から現れた。
軽やかに料理を並べ、手際よく配膳をこなす。
そんな彼に、シェガランはすかさず声をかけた。
「なあ婿殿って呼ばれてるんだけど、いいよな?」
「よくない」
「でもエルランティア母上公認だぞ?」
「……母上がそう言っても、俺は許可してない」
「えー、この前のキスOK条件とかあったのに?」
「今それ関係ない!」
周囲の団員は騒然とした。
「キス!?」「条件!?」と、耳ざとく拾った単語に反応してざわつく。
厨房からこっそりその様子を見ていた副料理長が苦笑していた。
「……あの二人がいる限り、厨房も食堂も退屈しねぇな」
そしてこの夜、ルシェファンは厨房業務を終えてもなお、「婿殿事件」と「条件付きキス事件」を団員たちに根掘り葉掘りされ続けることになるのだった。
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