68 / 111
「紅葉狩り」で狩るモノは
しおりを挟む
秋の森は、赤や黄金の葉に彩られていた。
だがその美しさの影で、旅人を襲う山賊たちが頻出しているとの報告が相次ぎ、騎士団の一隊が討伐に派遣されることになった。
「山賊ごときに手間取るな。だが油断はするなよ」
小隊長の号令に、若き騎士たちは頷く。
その一角で、シェガランとルシェファンも並んでいた。
ルシェファンは緊張よりもむしろ、手元に抱えた魔法具の石板や小瓶の整理に忙しい。
「……今回は戦闘だから、すぐに使える火の加護、いや、相手が森に潜むなら風の探知も……あ、でも剣に付与するなら雷が一番――」
「……ルシェ。落ち着け」
シェガランが横目で呆れ気味に言う。
森の奥へ入ると、案の定、山賊たちの待ち伏せに遭遇した。
「出やがったな!」
小隊が構えると同時に、山賊たちは鬨の声を上げ突撃してくる。
シェガランは一歩前へ。
剣を抜き放つと、無駄のない動きで次々と山賊を制する。
その瞬間、背後でルシェファンが叫んだ。
「シェガラン! 雷光付与!」
彼が詠唱を終えると、シェガランの剣が淡く雷を纏った。
振り下ろす度に稲光が走り、山賊たちの武器を弾き飛ばし、動きを封じる。
「……お前の付与、いつもながら助かる」
「でしょ? 戦闘は君の担当、僕は補助! 完璧な役割分担だからね!」
数人を倒すと、他の山賊たちは怯み始めた。
逃げようとする者を、シェガランは冷静に追い、剣の腹で打ち据え捕縛していく。
戦闘が一段落すると、ルシェファンは素早く仲間や敵の負傷者を確認し、清浄の魔法で傷口を洗い、布で手当てを施した。
「うん、命に別状はなし。包帯を替えたら大丈夫」
その合間に、彼は鍋を取り出し、あっという間に温かいスープを用意する。
戦いの緊張で張りつめていた空気が、ほっと和らいだ。
「……まさか討伐の最中に料理が出るとはな」
仲間の騎士が笑うと、ルシェファンは得意げに肩をすくめた。
「心と体の回復は食事から! ってね」
シェガランは捕縛した山賊を縛り上げ、冷静に状況を確認して戻ってきた。
「逃げ損なった連中は全員捕らえた。死者もなし」
「さすが! 僕も治療は一通り済んだし、あとは王都まで護送するだけだね」
紅葉の森に夜が迫り、篝火が焚かれる。
騎士たちが食事を取りながら談笑する中、シェガランは背に剣を立てかけ、隣に座った。
ルシェファンはスープを差し出し、にこりと笑う。
「ね? やっぱり僕たち、いいコンビでしょ?」
「……ああ。お前がいなければ、俺はただ斬るだけの剣になる」
「ふふっ、それで十分格好いいけどね。でも僕がいるから、もっと輝けるんだよ♪」
シェガランは言葉を返さず、ただ小さく笑って受け取った。
秋の夜、篝火の明かりに照らされる二人の影は、互いに寄り添うように揺れていた。
だがその美しさの影で、旅人を襲う山賊たちが頻出しているとの報告が相次ぎ、騎士団の一隊が討伐に派遣されることになった。
「山賊ごときに手間取るな。だが油断はするなよ」
小隊長の号令に、若き騎士たちは頷く。
その一角で、シェガランとルシェファンも並んでいた。
ルシェファンは緊張よりもむしろ、手元に抱えた魔法具の石板や小瓶の整理に忙しい。
「……今回は戦闘だから、すぐに使える火の加護、いや、相手が森に潜むなら風の探知も……あ、でも剣に付与するなら雷が一番――」
「……ルシェ。落ち着け」
シェガランが横目で呆れ気味に言う。
森の奥へ入ると、案の定、山賊たちの待ち伏せに遭遇した。
「出やがったな!」
小隊が構えると同時に、山賊たちは鬨の声を上げ突撃してくる。
シェガランは一歩前へ。
剣を抜き放つと、無駄のない動きで次々と山賊を制する。
その瞬間、背後でルシェファンが叫んだ。
「シェガラン! 雷光付与!」
彼が詠唱を終えると、シェガランの剣が淡く雷を纏った。
振り下ろす度に稲光が走り、山賊たちの武器を弾き飛ばし、動きを封じる。
「……お前の付与、いつもながら助かる」
「でしょ? 戦闘は君の担当、僕は補助! 完璧な役割分担だからね!」
数人を倒すと、他の山賊たちは怯み始めた。
逃げようとする者を、シェガランは冷静に追い、剣の腹で打ち据え捕縛していく。
戦闘が一段落すると、ルシェファンは素早く仲間や敵の負傷者を確認し、清浄の魔法で傷口を洗い、布で手当てを施した。
「うん、命に別状はなし。包帯を替えたら大丈夫」
その合間に、彼は鍋を取り出し、あっという間に温かいスープを用意する。
戦いの緊張で張りつめていた空気が、ほっと和らいだ。
「……まさか討伐の最中に料理が出るとはな」
仲間の騎士が笑うと、ルシェファンは得意げに肩をすくめた。
「心と体の回復は食事から! ってね」
シェガランは捕縛した山賊を縛り上げ、冷静に状況を確認して戻ってきた。
「逃げ損なった連中は全員捕らえた。死者もなし」
「さすが! 僕も治療は一通り済んだし、あとは王都まで護送するだけだね」
紅葉の森に夜が迫り、篝火が焚かれる。
騎士たちが食事を取りながら談笑する中、シェガランは背に剣を立てかけ、隣に座った。
ルシェファンはスープを差し出し、にこりと笑う。
「ね? やっぱり僕たち、いいコンビでしょ?」
「……ああ。お前がいなければ、俺はただ斬るだけの剣になる」
「ふふっ、それで十分格好いいけどね。でも僕がいるから、もっと輝けるんだよ♪」
シェガランは言葉を返さず、ただ小さく笑って受け取った。
秋の夜、篝火の明かりに照らされる二人の影は、互いに寄り添うように揺れていた。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
最強ドラゴンを生贄に召喚された俺。死霊使いで無双する!?
夢・風魔
ファンタジー
生贄となった生物の一部を吸収し、それを能力とする勇者召喚魔法。霊媒体質の御霊霊路(ミタマレイジ)は生贄となった最強のドラゴンの【残り物】を吸収し、鑑定により【死霊使い】となる。
しかし異世界で死霊使いは不吉とされ――厄介者だ――その一言でレイジは追放される。その背後には生贄となったドラゴンが憑りついていた。
ドラゴンを成仏させるべく、途中で出会った女冒険者ソディアと二人旅に出る。
次々と出会う死霊を仲間に加え(させられ)、どんどん増えていくアンデッド軍団。
アンデッド無双。そして規格外の魔力を持ち、魔法禁止令まで発動されるレイジ。
彼らの珍道中はどうなるのやら……。
*小説家になろうでも投稿しております。
*タイトルの「古代竜」というのをわかりやすく「最強ドラゴン」に変更しました。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
【現在休載中】
次回更新は12月2日を予定しています。
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる