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 グラタンを食べ終えた波留がバスを使っている間、来夢は紫苑にニヤけた顔で話す。
「な、二階の俺の部屋使うからさ。お前は……」
「解ってる。一階のリビングで寝るさ」
 二階は二つの洋間に挟まれて、6畳の和室が一つある。
 紫苑の部屋は、その和室だった。
 両隣の洋間を来夢と、今は就職して家を出た長兄が使っていた。
 さすがに情事の喘ぎ声を聞きながら眠るような無神経さは、紫苑にはなかった。
 それが波留の声なら、なおさらだ。

「あ~、あったまった!」
 ほかほかの波留が、ぶかぶかの部屋着で現れた。
 来夢の服を、借りているのだ。
 その姿が、いかにも来夢の恋人、といった風で紫苑には辛かった。
「来夢、もう二階に行ったぞ」
「あ、そう。ね、紫苑はまたリビングで寝るの? 寒くない?」
「大丈夫だよ」
 ごめんね、と言い残し、波留は階段を上っていった。
「……俺の心配なんか、するんじゃねえっての」
 そんな波留だからこそ、好きになったのだが。

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