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しおりを挟む芳樹がミルクティーを淹れる間、青葉はうなだれてソファに座っていた。
「さぁ、特製のミルクティーだ。飲んで温まってくれ」
「ありがとうございます」
青葉は、芳樹の淹れたお茶を、機械的に飲んだ。
だが一口含むと、お茶から芳樹の想いがいっぱいに広がってきた。
いい香り。ほどよい甘みと、豊かなコク。
これまで智貴のために、何杯ものお茶を淹れてきた青葉だからこそ、その価値が解る。
(芳樹さんは、心から僕のことを心配してくださっているんだ)
大切に、青葉はミルクティーを飲んだ。
芳樹の想いを汲み取るように、飲み干した。
飲んでしまって、ふぅと息をつくと、あれだけ苦しかった心が少し軽くなっていた。
「実は」
そう、青葉の方から話を始めた。
「実は、智貴さまは新しい家事使用人をお傍に置いておいででした」
芳樹は、息を呑んだ。
(安藤さんは、青葉の代わりをすでに作ったということか)
ロマンチストだとばかり思っていたが、なかなかにしたたかなことだ。
青葉を慰めようと、芳樹は言葉を選んで返事をした。
「家事使用人は、何人でもいるだろう。たまたま傍にいたんじゃないか?」
「違うんです。特別な人なんです」
青葉は、安藤邸で盗み聞いた二人の会話を芳樹に語った。
「あの人はもう、智貴さまの愛を。お情けを何度でも受けているんです。そして、今夜も」
芳樹は、とまどった。
返す言葉が見当たらない。
だが、自分がなすべきことは充分心得ていた。
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