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 夜、芳樹は自宅マンションで、遅くまで仕事をしていた。
 明日の会議までに、10の案件に対する意見と、その根拠をまとめておかなければならないのだ。
 そこへ、ふと背後のドアが開く気配がした。
「芳樹さん」
「青葉。どうした? 眠れないのか」
 青葉の手には、トレイがあった。
 そしてその上には、ホットレモネードが温かな湯気を立てている。
「遅くまで、お疲れ様です」
「ああ、ありがとう。一息つこうかな」
 デスクを離れ、芳樹はソファにくつろいだ。
 その隣をポンポンと叩いて、青葉に座るよう促した。
「傍にいてやれなくて、ごめんな。今日は辛い目に遭ったのに」
「いいえ。形は違えど、智貴さまとの決別はつきました」
 安藤邸に二週間ぶりに帰った、青葉。
 しかしそこに待っていたのは、あまりに早い智貴の心変わりだった。
「ちゃんと、しっかり泣いたかい?」
「はい」
 そうは言っても、まだ彼の心からは血が流れているに違いない。

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