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しおりを挟む「青葉、どのスーツがいいと思う?」
松の明けた10日、芳樹はクローゼットの前にスーツを並べて迷っていた。
「芳樹さんがファッションでお悩みだなんて。珍しいですね」
「今度、大事な方と会食することになってね。ドジは踏めないんだ」
正月明けだから、明るい色にするか。
はたまた、初対面の相手に、誠実さをアピールするか。
「この、チョークストライプはどうですか? 紳士的に見えます」
「さすが青葉。これを選んでくれるとはね」
これに決めた、と芳樹は一着のスーツを取り上げた。
「では、あとはシャツとネクタイとベルトとソックスとハンカチと靴をコーディネイトしましょう」
「青葉がいてくれると、楽ができるよ。ありがとう」
「どういたしまして」
小物を決めながら、芳樹は会食の相手の話をした。
「お父様が縁を繋いでくださった方なんだけどね。帝都銀行の頭取さん」
「……帝都銀行!?」
この国で知らない人は無いほどの、巨大バンクだ。
青葉は、素直に驚いていた。
「今後、取引ができるかどうかは、お前にかかっている! とか何とか、言ってたよ」
「それは、気を引き締めてかからないといけませんね」
「疲れるだろうな。帰ったら、青葉が癒してくれ」
「喜んで」
その三日後、芳樹は勇んで頭取との会食に出掛けて行った。
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