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大波小波

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「お兄様にお会いできて、僕は本当に嬉しいんです。これだけは、解ってください」
「僕は……、僕も、嬉しいよ。だけど、芳樹さんの愛人だなんて、あんまりだな」
 愛人、という言葉で、怜は心の均衡を保った。
「芳樹さん、この縁談は双方にとって利益を産みます。僕と、結婚しましょう。青葉くんは、愛人として認めます。だから」
「怜くん、青葉は私にとってかけがえのない人なんだ。愛人では、おさめられない」
 ぽろり、と怜の瞳から涙がこぼれた。
「え? あ? 僕、何を泣いて。嫌だな、どうしたんでしょう、僕」
 芳樹は、その姿にひどく心を傷めた。
「傷つけてしまって、本当にすまない」
 涙を拭く怜に青葉が近づこうとしたが、芳樹は黙ってそれを止めた。
 そして、そっとその背を押すと、テーブルから離れ、去って行った。
 残された怜は、止まらない涙に困惑していた。
 
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