私は君の夢を見る ~実業家アルファ×薄幸オメガ 私は君を、幸せにしたい~

大波小波

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「ダメッ! やめ、てぇえ!」
「……これは?」
 紅い跡が、鎖骨にある。
 それだけじゃない。
 よく見ると、希の全身に。
 いや、性感帯と思われる箇所に、点々と痕が残されている。

『僕は、兄さんから逃げられないんです』

 以前、希が訴えてきた言葉が甦る。
「希、まさか」
「いや……ッ」
「お兄さんは、君を」
 呻いて、希は静かに泣きだした。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
 もうダメ。
 知られた。
 一志さんに、僕の最もただれた部分を見られた。

 しかし一志は、そんな希を優しく抱きしめた。
「謝るのは、私の方だ。希、辛かったな。よく耐えてきたな……」
「一志さん!」
 まるで子どものように、希は一志にむしゃぶりついて泣いた。
「いいよ。いっぱい泣いていいよ。今まで我慢してた分、全部泣いていいよ」
 泣いて泣いて、泣き疲れて。
 しゃくりあげながら、希は一志の腕にしがみついた。

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