金曜日の少年~「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく~

大波小波

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 駿は伊織の鞄を持つと、彼の後に従って自動車に乗った。
 黒塗りの大きな高級車が、滑るように走り出す。
 自家用車になんか乗ったこともない駿は、目をぱちぱちさせていた。
 美麗な内装に、心地よいシート。
 流れる車窓を、夢中で見ていた。

 そこへ、ナビシートから身を乗り出し、護衛の男が駿に話しかけて来た。
「おい、金曜日の少年」
「あ、僕のことですね」
 今日一日、粗相のないように、と男は従者が果たすべき役割について教えてくれた。

 常に、伊織さまからは、一歩下がって歩くこと。
 次に、伊織さまがなさることを、一手先まで読んで行動すること。
 さらに、伊織さまに何か危険が及んだら、身を挺してお守りすること。

 こういった基礎から始まり、一日の流れも、男は話した。

 朝は、教室までお見送りする。
 昼は、昼食のお世話をする。
 夜は、お屋敷で夕食のお供をする。
 
「……そして、伊織さまが入浴を終えられたら」
 そこで、車は学校に着いてしまった。
 先が気になるところだったが、駿は慌てて外へ出た。
 ドアを大きく開けて、伊織が降りやすいスペースを確保する。
「どうぞ、伊織さま」
「うん」
 駿の、一日従者が始まった。


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