金曜日の少年~「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく~

大波小波

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 長いキスが、終わった。
 駿の青ざめた頬は上気し、ほのかに色づいていた。
 伊織はそれを見て、安心した。
 彼はもう、泣いてはいない。
「今夜は、ここまでにしておこう。だが、来週の金曜日はどうかな?」
「来週のことを言うと、鬼が笑いますよ」
「それは、来年だ」
 来週の金曜日が楽しみな少年が、二人。
 伊織さま、今度はどんな表情を見せてくれるんだろう。
 駿、今度はどう私と接するのかな。
「ちょうど0時だ。金曜日は終わった。駿は、ひとまず自宅へ戻るといい」
「ありがとうございます。おやすみなさい、伊織さま」
 笑って、二人は別れた。
 広いお屋敷から自宅まで、自動車で送ってもらった。
 別れ際、運転手が駿に封書を手渡してきた。
「伊織さまからです」
 何だろう、と受け取り、駿はお礼を言って、小さな古いアパートへと帰った。
 そして、点かないと解っていながらも、電灯のスイッチを入れた。
 料金を滞納していて、止められているのだ。
 だがしかし。
「電気が点いた!」
 明々と、久しぶりの電灯が灯った。
 まさか、とキッチンへ走る。
「ガスも! 水道も!」
 ライフラインが、全て使えるようになっている!


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