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「何かまた……増えてない?」
正吾の病室へ入った竜也と朋は、溢れかえらんばかりのお見舞いの品に目を円くした。
「全部、取引先や親戚からだ。だから、死期は内緒にしておきたかったのになぁ」
こんなに立派なメロンなんか貰っても、食欲がないので食べる気も起きない。
そう、正吾はこぼした。
「十和子のやつが、全部バラしちまって。私は、こっそり死にたかったのに」
「父さん。そう、死ぬ死ぬ言わないで」
「正吾さん、これ。少しですけど、お見舞いです」
肩身が狭そうに朋が差し出したのは、灯のように赤い、美しいシクラメンの鉢植えだった。
豪華な胡蝶蘭やシンビジュームに比べると見劣りする、朋が選んだシクラメン。
だが正吾は、その鉢植えをひどく喜んだ。
「そうか。もう、そんな季節なんだな」
私が理紗さんに告白したのも、シクラメンの季節だった。
そんな風に、正吾は語った。
「理紗さんとは、将来を誓い合ったのだが。残念ながら、家柄が違うと周囲に猛反対されてな」
「初めて聞くよ」
「理紗さんは、私のことは何一つ言わなかっただろう?」
「うん……」
その理由は、これだ。
正吾は服をはだけて、竜也に背を向けた。
そこには、朋の見慣れた極彩色の昇り竜が躍っていた。
正吾の病室へ入った竜也と朋は、溢れかえらんばかりのお見舞いの品に目を円くした。
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そう、正吾はこぼした。
「十和子のやつが、全部バラしちまって。私は、こっそり死にたかったのに」
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「正吾さん、これ。少しですけど、お見舞いです」
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