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「朋。父さんの葬儀だけど……」
「解ってます。僕は、行けませんよね」
 愛人の僕が、のこのこお葬式に出かけたら、どうなるか。
 それくらいの想像力は、傷ついた朋の心にもあった。

「父さんの写真、持ってる?」
「お見舞いに行った時に撮ったのが、スマホに残ってますけど」
「それをプリントアウトしてさ、ちょっと飾ろうか。花を、果物なんかも買ってきて、お供えしようか」
 私たちだけの、小さなお葬式をしよう。
 そう、竜也は提案した。
 それで少しだけ朋は落ち着いたのか、涙を流すことだけは、やめた。

「一緒に、出掛けよう。買い物しよう」
「はい」
 しかし、コートを羽織って車のキーを手にし、今から出る、という時になってインターホンが鳴った。
 誰かが、訪ねて来たのだ。

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