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 慌ただしく動く周囲を、朋はぼんやりと感じていた。
(僕は、一体?)
 体を動かすのも、辛い。
 誰かが、その体を抱いて運んでいる。
 少し前の会話を、ようやく思い出した。

『……あなたたちは?』
『ご心配なく。我々は、当ホテルの医療スタッフです』

 ああ、良かった。
 お医者様なら、僕を診てくれる……。
 ところが、朋はホテルを出て、自動車に乗せられ始めた。
「おい。急げ」
「もっと奥へ、詰めろ」
 医者にしては、言葉遣いが乱暴だ。
「あなたたちは、一体……?」
 力を振り絞ってようやく出した朋の声に、男たちは焦った。
「こいつ、意識があるぞ」
「まずいな。仕方がない」

 この人たちは、医者じゃない。
 そうはっきりと悟った時、朋の目が布で覆われた。
 目隠しを、されたのだ。
 朋は、敵の手に落ちてしまった。
 そのままどこかへ、運ばれてしまった。


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