116 / 180
3
しおりを挟む「解ったのは、あなたがこの数日でみるみる朗らかになった、ということなの」
「朗らか、に。ですか」
「そう。屋敷内の主だった人間が、みんな口を揃えてそう言ったわ」
「数日で……」
そこで怜士は、思い当たった。
倫だ。
(倫に出会い、彼と触れ合ううちに、私は生気を取り戻したんだ)
怜士の表情に、彩華はうなずいた。
「その様子だと、気づいたようね。そう。あなたは、相羽さんに救われたのよ」
「そのようですね。いや、そうです」
私は、倫に救われた。
それはそうと、と怜士は彩華に問いかけた。
「情報収集、とおっしゃいましたが。その他には? 私の抱える諸問題についても?」
「何かしら。それ」
「えっ? いや、色々とあるでしょう。領内諸策やら、隣国の挑発やら」
「言われてみれば、そうね。ついでに、聞いておけば良かったわ」
「ついでに、って。そんな」
わたくしはね、と彩華は身を乗り出した。
「不満や不安は山ほどあるけど、このお屋敷に入ってまず気になることと言えば、怜士さんなの。あなた、わたくしの弟なのよ?」
実の弟が元気かどうかが、最優先!
「怜士さんが丈士さんを心配していたように、わたくしもあなたが心配なの」
そして怜士は、彩華に額をつつかれた。
「ふふっ。久しぶりだな、お姉様に額を弾かれるのは」
「でしょう?」
笑顔の弟に、姉も明るく笑いかけた。
重苦しかった書斎に、笑い声がようやく生まれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
76
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる