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1話 お互いの告白
しおりを挟む『明日、君の御両親に会いに行こう』
こんな怜士の提案に、倫は動揺した。
急に、明日と言われても!
(それに、僕。実家の場所も知らない!)
ここは、以前読んだ小説の世界だ。
馴染みの土地もなければ、見知った人々もいない。
しかも倫自身が『相羽男爵』の子息、ということになっている。
(お父さんは、男爵って柄じゃなかったし……)
どきどきと、心臓を激しく打たせる倫に気づかないまま、怜士は自らの進退と未来像について話し始めた。
「私は侯爵の爵位を返上し、政界から退きたいと考えているんだ」
怜士は、それが姉・彩華の勧めであることも、明かした。
「私の後任には、お姉様が就く。そして、ゆくゆくは息子の光希くんに継がせる」
確認するように、小さくうなずきながら聞いていた倫だったが、素直な疑問を投げかけた。
「怜士さまは、その後どうなさるんですか?」
「うん……」
怜士は倫の髪に、再び手をやった。
ひとつ撫で、そして決意したように告げた。
「実は、旅に出たいと思っている」
「旅に、ですか」
突飛な怜士の答えだったが、倫はすんなりと受け入れることができた。
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