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しおりを挟む「おや?」
「怜士さん、どうしたんですか?」
「いや。やけに片付いてるな、と思って」
しばらく誰も立ち入ったはずのない場所なのに、塵ひとつ落ちていない。
空気も淀んではおらず、これではまるで……。
「まるで、事前に整えたような感じだな」
「怜士さん、テーブルに手紙が置いてあります」
木製の、アンティーク調のテーブルから、倫がクリーム色の封書を取り上げた。
怜士が受け取り中を改めたが、読む途中から彼の顔には苦笑が浮かんだ。
「どうかしたんですか?」
「倫も、読んでくれ」
便箋を受け取り、倫もその上の文字を追ったが、やはり怜士と同じく笑顔になった。
その手紙は、彩華からのものだったのだ。
『怜士さん、倫さん。まずは山荘の掃除から、と思っていたでしょう。時間が、もったいないわよ! わたくしが、人にお願いして済ませておきました。冷蔵庫にも、いろいろ詰めてもらったから召し上がってね。それでは、楽しいひとときを!』
姉らしい、気配りだ。
「お言葉に甘えて、楽をさせてもらおうか」
「すぐに、頂上へ向かいましょう!」
元気は、有り余っている。
二人、手を取り合って外へと飛び出した。
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