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しおりを挟むゆっくりと立ち上がった倫は、もう泣いてはいなかった。
「約束、したんだ。怜士さんと」
瞼を閉じ、彼との最期を思い出した。
『愛してるよ、倫』
『愛してます、怜士さん』
『もし、君が助かったら。どうか、私の分まで、生きて欲しい』
『怜士さん?』
『決して、絶望せず。君、らしく、前を、向いて、進んで……。約束……』
『はい。約束します……!』
「決して絶望しないで、前を向いて進むんだ」
それが、怜士さんとの約束。
彼と共に生きた、証。
足元には、黒いフォーマルバッグが置いてあった。
虎太郎が届けてくれた、高校指定の青いリュックではない。
服装も、制服に変わっている。
怜士と最後にいた時の、春色のシャツとベージュのチノパンは消えていた。
「帰らなきゃ。家に」
そして、お父さんとお母さん、お兄さんの供養を毎日するんだ。
そこに、携帯のコール音が響いた。
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