上 下
55 / 91

6

しおりを挟む

「外山さんの言う通りに、刺青はしていないけど。そのうち、何かの節目に入れることになるかもな」
「僕は、何だか嫌だな。誠さんが、タトゥーを入れるの」
 そうすると、僕の手の届かない遠くへ行ってしまうような気がする。
 優しい誠さんが、怖くなってしまうような気がする。
「露希が嫌なら、一緒にいる間は入れないよ。」
「本当? ありがとう!」
 安心したようにパフェをぱくつく露希を見ながら、誠の胸はきりきりと痛んだ。
(あと20日切ってるんだよ。君と一緒に、こうしていられる日々は)
 月末には、上納金を収めなければならない。
 その時に、露希は外山の手を経て組長のものになる。
(親父さん、喜ぶだろうか)
 喜ぶだろうな、と誠は額を押さえた。
 露希は、可愛い。
 見た目だけでなく、その内面も素直で綺麗だ。
 その上、抜群のセックステクニックと極上の名器の持ち主だ。
 組長が、喜ばないはずがない。
「誠さん、どうしたの?」
「あ、いや。何でもない」
 露希に付き合って頼んだパフェは、半ば溶けてしまっていた。
 自分の心も、ぐずぐずに溶けて壊れてしまいそうだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

BL / 連載中 24h.ポイント:3,642pt お気に入り:2,726

たしかなこと

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:65

健気な美少年は大富豪に愛される

BL / 完結 24h.ポイント:702pt お気に入り:2,017

処理中です...