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しおりを挟む「僕も、要さんのことが好きだよ」
「ありがとう、宇実」
二人でつないだ手を、そっと握り合った。
「私と。……交際してくれる?」
「……うん。だけど」
「だけど、何?」
「その。プラトニックラブでも、いい?」
プラトニックラブとは、精神的なつながりを重視し、肉体関係のない恋愛のことだ。
要するに……。
「エッチとかは、したくないんだ。あ、誤解しないでよ? 要さんがイヤ、って意味じゃないから!」
一生懸命にラインを引いたり、言い訳をしたりする宇実。
そんな彼を、要は受け入れた。
「いいよ。君と、今より深く心を通わせることができるのなら、私は嬉しい」
「ありがとう、要さん。……好きだよ」
「私も、宇実が好きだ」
囁き合い、二人はふんわりと抱き合った。
要の体温を受け止めながら、宇実は考えていた。
(要さんは、8月で僕の前から去ってしまうんだ)
海外の大学へ、入学するために。
それまでの、期間限定の恋。
だったら、いいじゃないか、と思った。
(恋に溺れることは、ないんだから)
少し、胸が痛い。
あまりに短い恋と解っていながら、一歩踏み出した。
でも、後悔はしない。
そう決めて、要の手をしっかりと握った。
握り返してくれる彼のぬくもりを感じながら、眠った。
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