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しおりを挟む朝食の後、要と宇実は電車に乗った。
土曜日の午前中は乗客も少なく、二人はシートに掛けて揺られた。
「わぁ、海が見える!」
「景色、いいでしょう」
あの海へ行くのだ、と宇実は要に打ち明けた。
「もしかして」
「そう。要さんの、思い出の海だよ」
幼い頃、ヨットで遊んだ美しい海。
そこへ招待されるなんて!
「感激だよ、宇実。ありがとう!」
「もうすぐ、着くよ」
二つほど駅に停車した後、電車は目的地に着いた。
「ああ、ここ! このヨットハーバー、覚えてるよ!」
色とりどりの帆を持つたくさんのヨットが、入り江に停泊している。
潮の香りを吸って、要は思い出にしばし浸った。
豊かな海を、チャーターしたヨットで風を切って走ったこと。
海は青いと思っていたが、初めて深い緑色の波を見たこと。
ヨットの上で食べた海の幸が、素敵に美味しかったこと。
そんな要に、宇実は弾んだ声を掛けた。
「今日は要さんに、新しい思い出を提供するよ」
「何だろう。ワクワクしてきた!」
地元の遊覧船が発着するターミナルへと、宇実は要をいざなった。
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