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しおりを挟むとてもシンプルだが、遠大さを感じさせるメロディー。
そして、美しい歌詞。
二人は、大きなクッションに座って、その音楽に浸った。
「二人で、世界へ羽ばたこう。さあ、まだ見ぬ世界へ……」
小声で口ずさむ要に、宇実は軽くもたれた。
「僕も歌いたいな。歌詞、見せてくれる?」
「うん。一緒に歌おう」
二人で 舟を漕ぎ出そう さあ あの虹の向こうへ
僕の大切な 親友
太陽と月と 僕と君
何度もレコードをかけ、一緒に歌った。
そうするうちに、次第に要の目には、涙がにじんできた。
(なぜだろう。胸が苦しい)
隣には宇実がいて、共にこうして歌ってくれているのに。
「宇実」
「何?」
「……いや、何でもない」
言葉にする代わりに、要は宇実の手を握った。
そして、無理に明るく声をあげた。
「午後は、どうしようか。どこかへ、出かける?」
「そうだね。どうしようかなぁ」
宇実は、急いて答えを出さなかった。
「後で考えるから。今は、もう少しこのままでいさせて」
握り返してくる、温かな手。
「うん。……ありがとう、宇実」
二人で口ずさむ音楽は、ただ優しかった。
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