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しおりを挟む「おーい! そろそろ、集合の時間だよ!」
宇実の伯父が、遠くで大声を上げている。
瀬渡し船が、磯に到着したのだ。
浜で漂着ごみを拾っていた人々は、みんなゴミで大きく膨れ上がった袋を持って笑顔だ。
要と宇実も笑顔を交わし、船へ向かった。
「今日も、たくさん拾えたなぁ」
ビニール袋や発泡スチロール、ライターに、空き缶に、ペットボトル。
中には、海外の文字で表記されたものもある。
海流に乗って、はるばるやってきたのだ。
「拾っても拾っても、無くならないものだね」
伯父はぼやいたが、宇実は静かに言った。
「でも、誰かがやらないと。それに、子どもたちには未来があるから」
おぉ、と伯父は目を円くした。
(宇実くん、大人になったな)
それはおそらく、彼一人で孤独に高校へ通っていても、身に着かなかったに違いない。
その隣で一生懸命にゴミ袋を瀬渡し船に運んでいる、要の力によるものだろう。
(最初は、ただのお金持ちのボンボンと思ってたけど)
いい意味で、裏切られた。
伯父は要のことを、そう考えるようになっていた。
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