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しおりを挟む雅貴は自宅を『屋敷』と言ったが、まさにその通りだと藍は目を回していた。
広大な敷地。
時代がかった洋館。
そして、そのさらに奥にある、居住のための豪邸。
雨ですっかりあたりが暗くなっていたので、外観はうかがえなかったが、きっと芸術作品のようなのだろう。
邸宅はさすがに現代風の造りだったので、藍はさほど違和感を覚えることはなかったが、それでも緊張してソファに掛けていた。
「ようこそ、お越しくださいました」
「あ、あの。すみません」
物腰の柔らかな初老の男性にあいさつをされ、藍は背筋を伸ばしていた。
そんな藍に、男性は微笑みかけた。
「どうぞ、おくつろぎください。ただいま、ディナーの前のショコラでもお持ちいたしましょう」
「しょ、ショコラ?」
「お召し物も、ご用意いたします」
「あ……」
そういえば、自分は着の身着のまま、裸足で家を飛び出してきたのだ。
今はふかふかのスリッパを履かせてもらっているが、この立派な屋敷にそぐわないこと甚だしい。
小さな体をさらに縮めて、藍はソファで丸くなってしまった。
そんな藍に、男性は柔らかく声をかけてきた。
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