愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~

大波小波

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「僕、お屋敷のものを泥棒する、と思われちゃったのかな」
 客室で雅貴を待ちながら、藍は小さく笑った。
 見るもの全てが高価すぎて、泥棒する気も起きないよ。
「それに、平さんは命の恩人。そんな人のものを、盗むだなんて」
 ありえない、と藍は瞼を伏せた。

 本当に。
 あの人は、大きな心で僕を包み込んでくれて。
 命なんか、どこかへ投げ出してしまいたかった僕を、すくい上げてくれて。
「この感謝の気持ち、どうやって表せばいいんだろう」
 どうやったら、彼にお返しができるんだろう。
 それにはまず、雅貴を知ることが先決だ、と藍は考えた。
「今日一日、一緒にゆっくりお屋敷を廻って。お食事したり、お茶したりして」
 そしてその中で、自分の身の上を少しずつ語るつもりでいた。
 まずは自分を知ってもらって、それから彼の背景を教えてもらう気でいた。

「ああ。早く来ないかな、雅貴さん」
 そうつぶやき、藍は唇に手をそっと当てた。
「雅貴さん、って言っちゃった」
 平さん、ではなく、雅貴さん。
 そして今は、その方がなじむ心が確かに藍に芽生えている。
「今日中に、雅貴さんって呼べるようになるかな?」
 久々に、ワクワクしていた。
 窓からは、日の光が明るく差していた。


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