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シャワーを浴び、上質な泡で全身を清め、バスタブから出るころになっても、藍は雅貴への恋心をきれいさっぱり洗い流せなかった。
「正直、身分違いだよ。家出オメガと、富豪のアルファなんて」
だけど、どうしても消すことのできない、新しい雅貴への思い。
「好きだけど。雅貴さんのことは大好きだけど、そんな意味じゃなくって」
独り言をぶつぶつつぶやきながら、藍は姿見に体を映した。
浮き出ていたあばら骨はずいぶん目立たなくなり、しなやかな肉がついてきている。
ほっとした藍だったが、そんな自分の体に痕を見つけた。
「これは……」
藍が実家で相手をさせられた、最後の客はサディストだった。
様々な道具で藍を痛めつけ、挙句の果てにはナイフで自分の名前を、その肌に刻み込もうとしたのだ。
さすがに継父が止めに入ったが、深い傷が一筋、その胸に残った。
白い肌に残された、忌まわしい傷。
それは、藍の陰惨な過去の記憶を、一気に甦らせてきた。
「う、うぅっ!」
ダメだ。
吐いちゃう!
藍は、バスルームへ逆戻りした。
そして、全て吐き戻してしまった。
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