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「ナイフの角度は、これでいいでしょうか?」
「結構ですよ。お食事は、楽しく美味しく召し上がれば、それでよろしいのです」
雅貴が仕事の間、藍は暇を見つけては渡辺にマナー講座を開いてもらっていた。
「いよいよ、明日です。お食事会」
「スーツもご用意いたしましたし、後は心にゆとりをお持ちになることです」
「心にゆとり、ですか」
はい、と渡辺はうなずいた。
そして、そのゆとりで雅貴を見守って欲しい、と訴えて来た。
「今回の妹尾様との出会いは、実質ご縁談、とわたくしは見ております」
「ええっ!?」
そこで渡辺は、社交界の牧田夫人のことを話した。
「あの御方は、妙齢の若者同士をご成婚に結び付けることを、なによりの喜びとなさっておられて……」
「それで、妹尾さんと雅貴さんが」
その通り、と渡辺は苦渋の表情だ。
「ですが、雅貴さまは未だ心に傷を負ったままであられます。深いお付き合いやご結婚は、御無理かと」
「何か、あったんですね。雅貴さんの過去に」
「はい。それは雅貴さまに、直にお聞きください。藍さまにならば、お話しなさることでしょう」
白沢さま、が、『藍さま』に代わってしまったことにも気づかず、渡辺は目を潤ませている。
(雅貴さん、一体何があったんだろう)
そして、僕は彼の力になれるのかな。
ひとつまみの不安を抱えて、藍は会食を迎えることとなった。
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