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「ひどい修羅場を見せてしまったな」
「いいえ。でも、良かったんですか?」
「何が?」
「妹尾さん……少し可哀想です」
いいさ、と夜風を頬に受けながら、雅貴は物憂げに話す。
「彼も大人だ。20代だから、恋が楽しいお年頃なんだろう」
「どういうことです?」
うん、と雅貴は唇に人差し指を当てて話した。
「彼は、結構派手に遊んでるらしい。社交界の中から、とっかえひっかえして、ね」
「そうなんですか」
「そろそろ遊びも終わり、と考えて最後に私を選んだんだろう。資産は充分に持っているから、嫁ぎ先としては魅力的だ」
「何か、すごい人ですね」
「渡辺が、調べてくれたよ」
そこで雅貴は、駐車場に待たせていたロールスロイスの運転手に告げた。
「少し、寄り道をしたい。コーヒーの美味しいカフェに、頼む」
「かしこまりました」
車に乗り込み、藍は考えた。
渡辺の名が出たので、思い出してしまったのだ。
『ですが、雅貴さまは未だ心に傷を負ったままであられます。深いお付き合いやご結婚は、御無理かと』
『何か、あったんですね。雅貴さんの過去に』
『はい。それは雅貴さまに、直にお聞きください。藍さまにならば、お話しなさることでしょう』
(カフェで、話してくれるかな。雅貴さん)
僕からも、それとなく訊いてみようかな。
小さな決心を胸に、藍はシートにもたれた。
「いいえ。でも、良かったんですか?」
「何が?」
「妹尾さん……少し可哀想です」
いいさ、と夜風を頬に受けながら、雅貴は物憂げに話す。
「彼も大人だ。20代だから、恋が楽しいお年頃なんだろう」
「どういうことです?」
うん、と雅貴は唇に人差し指を当てて話した。
「彼は、結構派手に遊んでるらしい。社交界の中から、とっかえひっかえして、ね」
「そうなんですか」
「そろそろ遊びも終わり、と考えて最後に私を選んだんだろう。資産は充分に持っているから、嫁ぎ先としては魅力的だ」
「何か、すごい人ですね」
「渡辺が、調べてくれたよ」
そこで雅貴は、駐車場に待たせていたロールスロイスの運転手に告げた。
「少し、寄り道をしたい。コーヒーの美味しいカフェに、頼む」
「かしこまりました」
車に乗り込み、藍は考えた。
渡辺の名が出たので、思い出してしまったのだ。
『ですが、雅貴さまは未だ心に傷を負ったままであられます。深いお付き合いやご結婚は、御無理かと』
『何か、あったんですね。雅貴さんの過去に』
『はい。それは雅貴さまに、直にお聞きください。藍さまにならば、お話しなさることでしょう』
(カフェで、話してくれるかな。雅貴さん)
僕からも、それとなく訊いてみようかな。
小さな決心を胸に、藍はシートにもたれた。
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