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 樹里の決意が実ったのか、退院の日はほどなくしてやって来た。

「迎えに来たよ、樹里」
「ありがとうございます、綾瀬さん」

 樹里を車に乗せ、徹は毛利と固く握手を交わした。

「もう、樹里くんをケガさせたりするなよ?」
「肝に銘じておく」

 運転席に乗り込み、医院を後にして、徹はそのままマンションへ向かった。

「ああ、やっぱり家が一番落ち着きますね」

 日の差し込むリビングで伸びをする樹里に、徹は嬉しくなった。
 ここを、自分の家、と認めてくれているのか。

「樹里、欲しいものはないか? 食べたいものとか」
「お願いしても、いいですか」
「退院祝いだ。何でも好きなものを言っていい」

 じゃあ、と樹里は少し下を向いた。

「抱いて、ください」
「樹里」
「入院中、ずっと綾瀬さんのこと考えてて。欲しくてたまらなかったんです」

 そんな樹里に、徹は両腕を開いた。

「嬉しいな。私と同じことを、考えていてくれたとは」

 綾瀬さん、と樹里は腕の中に飛び込んだ。

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