よろず探偵事務所はじめました! ~またはオジサン狼男とネコ少年が最強タッグを組むにいたるまで!~

大波小波

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9話 祈り


 新見の紹介した闇医者は、健が思っていたよりずいぶん若かった。
「こんな若僧で、大丈夫なんだろうな?」
「腕は確かだ。保証する」
 しかし、その医師・本多(ほんだ)は、未悠を見て顔をしかめた。
「獣人か。厄介だな」
「差別するな。未悠を死なせたら、お前も殺す!」
 カッカするなよ、と本多は未悠の傷を見ながら、健に向けて手をひらひらさせた。
「あんた、この子の保護者か?」
「……そうだ」
「じゃあ、立ち会ってくれ」
 急ぎ消毒をして術衣を身に着け、健は本多と共に手術室へ入った。
「麻酔を打つよ」
 どこかやる気のない本多にイライラしながら、健は未悠を見守っていた。
 すると、麻酔薬の入った注射針が、未悠の体の表面で曲がってしまったのだ。
「やっぱり」
「ど、どういうことだ?」
「この子は無意識的に、これ以上体を傷つけるものを拒否してるんだ」
 未悠は、組員たちに麻薬を打たれそうになった時のように、表皮を硬化している。
 これでは、患部を切開することも難しいだろう。
「そこで、あんたの出番だよ」
 本多は、健に声を掛けた。



 注射針やメスを受け付けるよう、未悠に語り掛けて欲しい、と本多は健に説いた。
「意識はないが、保護者の言うことなら心に届くかもしれない」
「解った」
 健は、未悠の手を取り話しかけた。
「未悠。今やっていることは、医療行為なんだ。君の命を救うことなんだ」
 だから。
「だから、抵抗する必要は無いんだよ。体を楽にして、お医者さんに任せるんだ」
 健は、必死に未悠へ語り掛けた。
 本多はその様子を見ながら、再び麻酔の準備をしている。
 よく見ていると、未悠の呼吸が落ち着いてきているようだった。
 その獣体も、常人の見た目に戻ってきている。
「……健さん」
「未悠!?」
 声を発した未悠に、健は喜んだが、本多はいい顔をしなかった。
「おい、喋るな。失血が進む」
 喋る元気があるのはいいが、灯滅せんとして光を増す、といった例もある。
「保護者さん、もっと話して。なんかこう、生きたくなるような話題!」
 今までのらりくらりとしていた本多に、焦りの色が見える。
 健はそのことで、未悠の危機を感じ取った。

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