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しおりを挟むぴくり、と未悠の手がわずかに動いた。
気のせいか、と思った健だったが、指は彼の手を握り返してくる。
「未悠」
「……健さん」
「未悠。私は、ここだ。大丈夫だよ」
「痛い……」
「痛いのは、生きてる証拠だ。安心していい」
未悠のかすんだ視界に、やがて健の顔が見えてきた。
目が、赤い。
頬が、濡れている。
「健さん、泣いて……」
「泣いてなんか、いないさ」
そう言いながらも、涙がこぼれてくる。
嗚咽が、漏れてくる。
「還ってきてくれ、未悠。ここに。私の元に」
そうだ。
還らなきゃ。
健さんのところに。
ああ、でも……。
「体が、だるい」
「何だって」
「寒い……」
再び瞼を閉じてしまう未悠に、健は焦った。
「寒い、だって?」
毛布を、掛けたほうがいいのか?
「いや、それよりも」
健は、服を脱いだ。
素裸になってしまうと、獣体に変化した。
完全獣化だ。
そして四つ足でベッドに上がると、未悠にぴったりと体を沿わせた。
(私の体温、全てくれてやる。だから、だから還ってくるんだ)
健にしがみつく未悠の四肢は、氷のように冷たい。
その体を、健は温めた。
喉で優しく唸りながら、温めた。
(健さんの声が、聞こえる)
未悠は、夢見心地で彼の声を聞いていた。
冬が和らいだら、梅を観に行こう。
素敵な梅園を知ってるんだ。
ドライブと洒落込もう
梅が咲いたら、次は桜だぞ。
桜の下で、お弁当広げて。
楽しいから。
絶対、楽しいから。
だから。
(だから僕は、このまま逝ってしまうわけにはいかない!)
未悠は、明るい光の方へ歩き始めた。
春の匂いのする方へ、向かった。
腕を伸ばし、温かい健の手を握った。
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