死んだと思ったら異世界に

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「やっと来たか」

俺はこちらに来たフェルに向かってそう呟いた。

「何を言って…！？」

「お前たち！何をしている！」

俺の呟きを聞いたグリフィスは一瞬不思議そうな顔をした…が自分の後方から聞こえた声に気づくと驚いた表情で勢いよく後ろに振り向いた。

「あ、主人様…」

そして後に振り返ったグリフィスは目の前に居る人物を確認する様に声を出した。

「おい、なんでこんな所に主人様が…」

「今日ってなんか特別な日って訳じゃないよな？」

「それよりもこの状況ってやばいんじゃ…主人様ってこういうのって嫌いじゃ無かったか」

フェルの突然の登場に周囲にいる人たちが驚き、周囲は騒がしくなる。

「グリフィス、私はなにをしているのか、と聞いているんだが？」

フェルがグリフィスにそう言うとグリフィスは直ぐにフェルの質問に答えた。

「は、はい！現在私は主人様の友人を騙る不敬者を断罪しようとしていたのです！」

グリフィスの発言を聞いたフェルは俺の事を一度見て、直ぐに納得した表情をしてグリフィスの方を向く。

「そうなのか、では聞こうか、何故その人間が私の友人ではないと判断したんだ？特に理由も無く自分の感情で勝手に判断した…なんて事はないよな？」

フェルはグリフィスに対して確認する様に言う。

「っ！？…勿論です」

フェルに問われたグリフィスは一瞬顔を歪めたが直ぐに表情を作りフェルの問いに答える。

「…そうか、ならば私にお前がそう判断した理由を言ってみよ」

どうやらフェルはグリフィスの話を聞くみたいだな、この状況を見てちゃんと話を聞こうとするなんて…

これは以前の話だが、俺を倒そうと複数のプレイヤーが手を組んで俺を囲んで攻撃しようとした所にフェルが出くわした事が有るんだが、フェルはその状況を見た瞬間に周囲に居たプレイヤーに向けて魔法をぶっ放した事がある。

その時のフェルは主があんな有象無象にやられるとは一ミリも思わないけど、一人を大勢で攻撃しようとする考えが気に入らないからぶっ飛ばしたって言ってたからな、それを考えるとフェルも以前より成長しているのだろう。

まぁ実際には、ゲームとは違って、この世界じゃ威力の高い魔法を人に放ったら死んじゃうから、それも関係してるんだろうけど、それでもちゃんと事情を聞いて判断しようとする様になったのは良い事だよな。

「分かりました、それでは説明させていただきます」

そう言ったグリフィスはフェルに対して説明を開始する。

「まず私がそこに居る人間を主人様の友人では無いと考えた理由はそこに居る人間の見た目です、そこに居る人間の見た目は大体20代前半位、エルフならともかく人間、それもその見た目で既に20年この地を治めている主人様と知り合うというのはあり得ないと判断しました」

確かに今の俺の見た目はユグドラシルオンラインをプレイしていた時と殆ど変わらないからな。

既に二十年間極寒地帯に居たフェルと、推定年齢20歳程度の俺が知り合いだという可能性はあり得ないって事だな。

まぁ俺の本当の年齢を言っても信じてもらえないだろうしな。

「ふむ、確かに20年ここから離れていない私が20歳そこらの人間と知り合いという可能性は殆ど無いだろう、だが見た目が全てだという訳ではあるまい、そこに居る人間も、若く見えて長い間生きているという可能性もあるだろう、先ほどの感じたその者の魔力を考えたら20歳そこらの歳では無いと分かるはずだが？」

「確かに…あの魔力量と質を考えれば…だがそれが本当だとしたら何故証拠を見せろと言ったときに証拠を見せなかったのだ？でも主人様のあの反応、もしかしてあの人間は本当に主人様の友人なのではないか？」

フェルの言葉を聞いたグリフィスは小さい声で呟きながら考え込んでしまった。

「皆の者！この人間は私の居住に連れて行くが問題は無いな？」

フェルは確認する様に周囲にそう言うが周りから意見は出なかった。

まぁこの状況でフェルに意見できる奴は居ないよな。

「待ってください！」

俺がそう考えていると後ろの方から大きな声が聞こえてきた。