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第28話 サムズアップ
しおりを挟むなんでこんなにダサいんだろう?
ずっと本当はおかしいと思っていた。林田さんは、いや、たぶん名前もウソだろうから、真っ黒おじさんは絶対にヤバいやつだとわかっていた。
それは自殺の手伝いをしていると説明された時も、ヤジマ君からティンブラーのカードを渡されたと聞いた時も心の底では変わっていなかった。
でも、それだと生き残れないから、おれはおれにウソをついた。
必死に真っ黒おじさんを信じるフリをした。
それなのに、けっきょく殺されるって、バカみたいだなって思った。てゆーか、バカだ。
でも、しょうがない。
だって、弱肉強食の世界なんだから。
強いやつに弱いやつが殺されるのは自然なことだ。
だから、ヤバい大人には近づかないようにしてたのに。従ってきたのに。
イボが気になる。さすようなかゆみが何度もおそってくる。もう最後だし、手の平をかきむしってえぐり取ってしまいたい。
「あの…イボ、かいていいですか?」
おれは最後にきょ可を求めた。心のはじっこから、ダセーぞ!って聞こえた。
真っ黒おじさんはニヤニヤして「ダメー」と言った。心のはじっこから、気持ちワリー顔!って聞こえた。
「じゃ、もう朝だし、てっとりばやくまずは血ぬきからしようね」
と真っ黒おじさんは言った。首にノコギリの刃があてられる。
真っ黒おじさんはぼっ起をしていた。
ああ、最後まで本音をかくして、自分をだまして、こんな気持ち悪いおじさんにこび売って死ぬんだなと思った。
くやしかった。でも、声ももう出せない。
「やめろー!」
ドンッ!
横から、生きていた坂上が真っ黒おじさんに体当たりした。
でも、フラフラだったし、坂上ってメガネのひょろいやつだから、真っ黒おじさんはちょっとゆれただけで、逆に坂上がふっとばされてたおれた。
「ぷっ、バカだなあ。死んだふりしてればいいのに」と真っ黒おじさんはおれに同意を求めるように目を合わせてニヤついてきた。「大人に逆らうなんて、バカのすることだよな?」
おれは親指を立てて、真っ黒おじさんの目に突っこんでいた。
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