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第10話 キミもプニプニの肉球と握手!
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街中を一人で歩いて帰った。
街をぼんやりと照らすのは月光草。なんでも月の光を蓄える性質のある草だそうで、蓄えた青色の光が漏れ出て、幻想的に街路を照らしている。
元いた世界の殺風景な帰り道を思い出す。点滅する蛍光灯、人通りのない壁に囲まれた狭い道。誰もいないボロアパート。
今いる世界の帰り道では、陽気なふわふわもこもこした人々が、そこかしこで笑い合っている。家に帰れば、アリシアたちがいて、こんなわたしまで温かく迎えてくれる。
ふと思った。さっき帰れると聞いた時、反射的に驚いた。なんとなく、ポイント・オブ・ノーリターンだと思っていたからだ。けど、帰れるにしても、さして元の世界に未練はないのだ。
改めて考えてみる。元の世界に、帰る理由などあるのだろうか?親もいない、恋人もいない、親しい友人も特にいない。あるのは、先の見えない未来と、そこでポツンと一人ぼっちのわたしだけだ。仕事だって、特に重宝されるわけでもない。むしろ軽く扱われている。
「ヨッ」
背後から声をかけられる。
「こんばんは、王様」
世界中の光を集めたような瞳を煌めかせて、王様は舌打ちした。
「チッ、なんだ、驚かないのかよ。つまらん」
やっぱりこの人わざとやってたんだな。
聖女といい、どうもこの世界の人々は人を驚かせたりするのが大好きな傾向がある気がする。パリピなのかもしれない。
「前々から思ってたんですけど、王様って暇なんですか?」
わたしが聞くと、
「うん。ぶっちゃけ暇!」と満面の笑みで王様は答えた。
「いやー、パッチとか優秀なやつらが多くてよー、オレの仕事全部やってくれんのよ」
城の外で会ったからか、いつもよりもさらにフランクな調子だった。
「王様がやるより、速くて、ミスも少ないとか?」
「その通り!」
ワッハッハ、と王様は胸を張って笑った。
「で、そのお暇な王様が一体何の用でしょうか?」
偶然会ったわけがない。明らかに待ち伏せしていたと、わたしは確信していた。
「うん」
王様は子どものように一回頷くと、
「パッチから説明受けたと思うんだけど、どうだ?辞めたくなった?」
と、真面目に、不安そうに聞いてきた。
それは、寂しそうな子猫のようでもあり、正直、こんなの卑怯だ!と内心叫んだ。
「その、今日のこともあるし」
どうやら、さっきわたしが泣いてしまったことに、責任を感じてもいるらしい。
「さっき泣いたのは、ちがうんです。王様のせいじゃないんです」
「いやー、どう考えても、泣かせたのオレだろ~」
王様のしっぽがはてな型になる。
「ちがいますー」わたしはそれが可笑しくて、微笑んだ。
「王様の、おかげ、ですー」
王様はちょっと固まって「あー、そう」とだけ言った。しっぽはビビビッと立っていた。
「だから、とりあえず、このままお世話になりたいです!」
わたしは頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
肉球で頭をポムポムされる。
わたしが顔を上げると、王様はドS顔でニヤァと笑った。
「ハッハッハ、じゃあ、こき使ってやろう!」
「それとな」
ずいっと一歩近づいてくる。
「ウチはそーいうんじゃねーって言ったろ?」
そう言って、ふわふわもこもこした手を、わたしに差し出してきた。
「ヨロシクな!」
満面の笑みだった。
「はい!」
わたしは、ふわふわもこもこ、プニプニのその手をつかんだ。
街をぼんやりと照らすのは月光草。なんでも月の光を蓄える性質のある草だそうで、蓄えた青色の光が漏れ出て、幻想的に街路を照らしている。
元いた世界の殺風景な帰り道を思い出す。点滅する蛍光灯、人通りのない壁に囲まれた狭い道。誰もいないボロアパート。
今いる世界の帰り道では、陽気なふわふわもこもこした人々が、そこかしこで笑い合っている。家に帰れば、アリシアたちがいて、こんなわたしまで温かく迎えてくれる。
ふと思った。さっき帰れると聞いた時、反射的に驚いた。なんとなく、ポイント・オブ・ノーリターンだと思っていたからだ。けど、帰れるにしても、さして元の世界に未練はないのだ。
改めて考えてみる。元の世界に、帰る理由などあるのだろうか?親もいない、恋人もいない、親しい友人も特にいない。あるのは、先の見えない未来と、そこでポツンと一人ぼっちのわたしだけだ。仕事だって、特に重宝されるわけでもない。むしろ軽く扱われている。
「ヨッ」
背後から声をかけられる。
「こんばんは、王様」
世界中の光を集めたような瞳を煌めかせて、王様は舌打ちした。
「チッ、なんだ、驚かないのかよ。つまらん」
やっぱりこの人わざとやってたんだな。
聖女といい、どうもこの世界の人々は人を驚かせたりするのが大好きな傾向がある気がする。パリピなのかもしれない。
「前々から思ってたんですけど、王様って暇なんですか?」
わたしが聞くと、
「うん。ぶっちゃけ暇!」と満面の笑みで王様は答えた。
「いやー、パッチとか優秀なやつらが多くてよー、オレの仕事全部やってくれんのよ」
城の外で会ったからか、いつもよりもさらにフランクな調子だった。
「王様がやるより、速くて、ミスも少ないとか?」
「その通り!」
ワッハッハ、と王様は胸を張って笑った。
「で、そのお暇な王様が一体何の用でしょうか?」
偶然会ったわけがない。明らかに待ち伏せしていたと、わたしは確信していた。
「うん」
王様は子どものように一回頷くと、
「パッチから説明受けたと思うんだけど、どうだ?辞めたくなった?」
と、真面目に、不安そうに聞いてきた。
それは、寂しそうな子猫のようでもあり、正直、こんなの卑怯だ!と内心叫んだ。
「その、今日のこともあるし」
どうやら、さっきわたしが泣いてしまったことに、責任を感じてもいるらしい。
「さっき泣いたのは、ちがうんです。王様のせいじゃないんです」
「いやー、どう考えても、泣かせたのオレだろ~」
王様のしっぽがはてな型になる。
「ちがいますー」わたしはそれが可笑しくて、微笑んだ。
「王様の、おかげ、ですー」
王様はちょっと固まって「あー、そう」とだけ言った。しっぽはビビビッと立っていた。
「だから、とりあえず、このままお世話になりたいです!」
わたしは頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
肉球で頭をポムポムされる。
わたしが顔を上げると、王様はドS顔でニヤァと笑った。
「ハッハッハ、じゃあ、こき使ってやろう!」
「それとな」
ずいっと一歩近づいてくる。
「ウチはそーいうんじゃねーって言ったろ?」
そう言って、ふわふわもこもこした手を、わたしに差し出してきた。
「ヨロシクな!」
満面の笑みだった。
「はい!」
わたしは、ふわふわもこもこ、プニプニのその手をつかんだ。
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