愛玩性具より愛を込めて~オ○ホに転生した私~

キョクトウシラニチ

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21、リコの想い

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 ドルトン博士のお見舞いから帰宅した私は厨房でコックのマークさんのお手伝いをして過ごしていました。
 その日のヘインリヒさんは定時前に帰って来たのです。過労だったので早く帰って来れて良かったです。

 私がエプロンを外しつつ、帰宅したヘインリヒさんに近付いて行くと、彼はフワリと笑いました。昨日とは全く違い、肌艶も血色も良く晴れやかな笑顔でした。少し痩せてしまった気もしますが、背中まである長い金髪の三つ編みは前みたいに輝きを取り戻しているようです。
「ただいま、リコちゃん」
「おかえりなさい。ご主人様」
 しばし二人で見つめ合って生ぬるい雰囲気になりました。気のせいかヘインリヒさんの背後にピンクのハートみたいなのが飛んでる気がしました。
「ドルトン博士の事、聞いたかな?」
「あ、はい。今日バルムさんから博士の事を聞きましたので、彼に治療院に連れて行ってもらってお見舞いしてきました」
「……そうなんだ」
 ん?さっきまで私に向かってハートが飛んでいたのですが、今は帰り支度をしている警備のバルムさんを少しだけ睨んでいる様な……?なんでしょう?
「ご主人様もお見舞いに行かれましたか?」
「いや、今日は行ってないよ。本当はリコちゃんと今から行こうかと思っていたけど、また明日にでも一人で言ってくるよ」
 ヘインリヒさんはそのせいで少し拗ねていたのでしょうか?
「え?ごめんなさい。私がドルトン博士の顔を見たくて……」
「うん。気にしてない。ね、リコちゃんちょっと体を清めてくるから、それから一緒に夕食にしよう。久しぶりにゆっくり二人で食べよう」
 私に対して蜂蜜を塗した飴の様な甘い顔を向けます。無駄に顔面が強い。心臓への攻撃を止めて欲しい。
「はい」

 ヘインリヒさんはバルムさんから報告を受けて、自室の方向へと歩いて行きました。手に持っていたお仕事の荷物を置きに行ったのでしょう。
 私は浮足立った気分で、鏡で髪の乱れがないかを少しだけチェックしました。

 その日は久しぶりにヘインリヒさんとゆっくりと夕食を食べる事ができて、私たちは二人で楽しく話をしました。ヘインリヒさんは王都どころか国の僻地にもあっという間に飛んで行ってしまえるので、素敵な観光地を今度二人で巡ろうという話になったのです。
 寝室にあったヘインリヒさんの王都の観光ガイドの本とデートの計画書を思い出して、温かい気持ちになりました。この国も世界も何も知らない私に精一杯教えてくれようとしている彼の思いが嬉しかったのです。
 感謝の気持ちは伝わっているでしょうか。私はちゃんとヘインリヒさんとの時間で、彼に好意を伝えられているでしょうか?
 私はこうして前世で「不愛想・可愛げが無い」と言われた事に囚われてしまうのが悔しい。それでも、目の前のヘインリヒさんはいつも私を肯定してくれます。

 夕食を終えてから、私は自分の部屋の前でヘインリヒさんにおやすみの挨拶を言います。
 勇気を出して、彼を引き寄せて背伸びをしてヘインリヒさんの頬にキスをしました。今朝のお返しなんです。恥ずかしいけど頑張りました。私たちは好き同士ですからね。

「おやすみなさいっ」
 逃げる様に自分の部屋に入って扉を閉めます。
 らしくない事をするものではありません。その後私はお風呂で石鹸を何度も手から滑り落してしまいました。

 部屋の前で別れたヘインリヒさんがフラフラと数歩だけ歩いてからしゃがみ込み「か…かっ、かわ、可愛い……可愛いぃぃっ…はあぁぁぁ…」と叫んで悶えていたのは知りませんでした。




 翌朝はヘインリヒさんに特別招集がかかり、私が起床した時には忙しく出勤準備をしているところでした。

「おはよう、リコちゃん。ご飯先に食べたよ。慌ただしくてゴメンね。ちょっと特別招集がかかったから行ってくるね」
 ヘインリヒさんはもう既に警備隊の服を着ていて、玄関でメイドちゃん達に見送られていました。二日前過労で倒れた人には見えない位元気な様子に、朝から嬉しくなりました。
「おはようございます。ご主人様、気をつけて行ってきてくださいね」
「うん、うん。ふふふ」
 私の顔を見て嬉しそうに笑っている彼の顔が何だか胸をモゾモゾさせてきます。私は昨日自分から彼の頬にキスをしたのを思い出して、恥ずかしくなって今朝はあまり彼に近付きませんでした。
 それでもヘインリヒさんは「隙あり!」とばかりに一歩踏み出すと私の左頬にチュッとキスをしてきました。
 瞬時に顔が熱くなってしまった私の内心を見透かしたように綺麗な顔で笑っているので、また可愛くない事を言ってしまいました。
「はい、はい。特別招集ですよ。急いでいってらっしゃい」
 また照れ隠しに素っ気ない対応をしてしまうのです。
 ヘインリヒさんは私に背中を押されるだけでも嬉しいのかチラチラとこちらを見つつも、外に出ると一気に魔法で飛び立ちました。
 見守っていた年上のメイドちゃんズの生ぬるい目線がいたたまれません。


 特別招集というのは緊急の大規模災害等で、ヘインリヒさんの膨大な魔力が必要になった時に発令されます。この前は森林火災に借り出され、彼一人で鎮火してその後の処理もこなしたらしいです。それでも魔力が半分しか減らなかったという話を聞いて、驚いたものです。

 朝食時、今日の招集の内容までは聞いていなかったので、私は少し心配になりました。
 ヘインリヒさんは警備隊という体を張るお仕事をしている上に、特別招集はとても危険な災害への対応です。……彼は皆を助けに行きますけれど、彼は誰が助けてくれるのでしょう……
 いつも彼一人という訳ではないらしいですが、やはり心配は尽きません。

 ヘインリヒさんが出勤してからしばらくすると、魔法使いの警備の人が来てくれました。若い魔法使いは警備専門の人なので特に話をすることもなく、私はメイドのマリーちゃんとセイラちゃんと一緒にお掃除をしたり、お料理のお手伝いをしたりしていました。

 マリーちゃんもセイラちゃんも十五歳で本当に若いのですが、この国では十二から十五歳位には働き始める人が殆どで、ヘインリヒさん達魔法使いや、法曹関係、特殊なお勉強が必要な人達がその学校に進むぐらいで、若くして働くのは普通の事のようです。
 マリーちゃんはドリエラさんの襲撃に巻き込まれましたが、私がオナホから人間に変わった場面では彼女は気を失っていたので、メイド達全員が私は外国からきた何か変わった事情のある要人だと思っているみたいです。
 しかも、その要人にヘインリヒさんが片思いしているというのが彼女達の認識で、生ぬるい視線で私たちを見守ってくれている様です。
 彼女達に小柄な私の年齢を答えるとかなり驚いていました。日本人は若く見られる説は間違っていないみたいです。死んだ時二十五歳だったので、今二十六歳だと話すと、彼女達はかなり驚いていました。
 私がメイドちゃんズにざっくばらんに接していると、彼女達も楽しく会話をしてくれるようになって今では空き時間に皆で休憩時間のお茶会をしたりしています。若い女の子達のおしゃべりは聞いていて飽きませんよね。楽しい。
 特に先輩メイドのソアラさんは二十歳で結婚しているのと、マリーちゃんは最近彼氏ができたらしくて、二人の話を聞くのが楽しくて仕方ありません。

「この間、マリーは彼氏のジョンさんとケンカしたらしいんですって」
 おしゃべりなセイラちゃんがクスクスと笑いながらマリーちゃんを揶揄います。
「もうっ!セイラったら、その話はよしてよ」
 マリーちゃんもセイラちゃんもここのメイドちゃん達は全員可愛い過ぎない?と心の中で私は彼女達のやりとりに悶えています。
 メイド二人の美少女と、綺麗すぎる二人のメイドのお姉さん達、……もしかしてヘインリヒさんは顔で二人を選んだのかしらと、変な嫌疑をかけそうになります。
 まぁ、その雇い主であるヘインリヒさん自身が、人外レベルの整い過ぎた美形なのですけどね。

「ジョンさんがマリーに内緒でプレゼントを用意しようとして残業を多くしていたらしくて、マリーは知らずにジョンさんに他に好きな人が出来たのかって、怒って詰め寄ったんです」
「わ、私詰め寄ってなんかいないわっ」
 セイラちゃんに恋人との痴話喧嘩をバラされて、マリーちゃんはアワアワと慌てていました。可愛い。
「それでひと悶着あって結局、二人でお揃いのピアスを買おうって話になって、二人でアクセサリー屋さんに行ったっていうだけの話なんですけどね」
「なんで全部言うの!もうっ!セイラったら」
 マリーちゃんは真っ赤になってプリプリとセイラちゃんに怒っている。
 微笑ましい話なので、私たち年上は笑ってそれを見守っていた。
「やっぱり大事なのは信頼と、対話よね」
 既婚者のソアラさんは物静かで人妻の貫禄というか、落ち着いている人です。
「なんでも話すのは大事よね」
 そう言ったナタリーさんは恋人がいるのでしょうか?まだ聞いた事が無いですが、この答えが出ると言うことは付き合っている人がいるのかしら?
「そうですよね。私も疑った事を正直に謝りました」
 マリーちゃんはまだピンク色のままの頬を押さえながら、反省しているのか下を向いているけど、どこか幸せそうなのが伝わってくる。
「私もこの間、夫とケンカしてしまって……」
 ソアラさんも幸せオーラを出しつつも、ちょっとだけ目を伏せて話始めました。

 恋人同士や伴侶になっても自分の気持ちを伝えないと、変な誤解をしたり、行き違いになるよね。

 彼女達の話に耳を傾けていると私はふと、前世の彼氏の事を思い出しました。
 もともと私に告白してくれて付き合う事になった彼氏とは、一年くらい付き合っていました。デートしたり、連絡を取り合ったり、私は男女のお付き合いがよく分かっていなかったから、彼がリードしてくれていたと思います。
 普通の交際でした。特別彼が好きで付き合ったわけでは無かった私も、いつしか二人で過ごすうちに信頼と愛情が湧いていました。でもエミちゃんが入社してからしばらくして彼氏から連絡があまり来なくなって……、最後に会ったのも二ヶ月ぶりとかの体を重ねるだけのお家デートでした。
 彼とは私が死んだ日に終わりました。
 会社の後輩のエミちゃんに心変わりした元彼氏。
 あまり思い入れはありません。
 私は可愛げが無いし、あんまり笑わないから、あの時にはきっと私への気持ちは冷めていたんだろうな。あの時は凄く悲しくて泣いたけれど、今となっては前世の出来事の一つと割り切れている気持ちもあります。少しトラウマのようなものも残っていますが。

 ヘインリヒさんとは仲良くできると良いけど。……前の彼氏よりも私に向けてくれている熱量が激しい気がするから、大丈夫かな……
 そういえば、私たちって……付き合っているという事なのかな?恋人という事でいいのかな?

 一度、王都の観光をしてデートはした。
 夜の趣向はともかく、彼を信頼している。
 お互いが好きだと思っている。
 一緒に住んでる。
 キスとかも……してる。
 ……(魔力を少なくするためだけど)フェラチオをした。

 うん……恋人同士かな。

 私は可愛いらしいメイドちゃんズの話を聞きながら、心の中でヘインリヒさんを思い出してはホワホワと充足感に似た嬉しい気持ちを感じていました。

 ヘインリヒさん。今日も早く帰ってこないかな。

『で、ね?また明日、夜、いいかな?今朝はまだ八割も回復してなかったけど、また明日の晩にはきっと満量に近付いているだろうから……今度はちゃんと、ね?』
 と、ヘインリヒさんにエッチな予約をされた事を思い出して、私は一人で恥ずかしい思いになります。足をモゾモゾさせてしまうのはなぜでしょう。
 ヘインリヒさんのアホ!


 そんな私の気持ちとは裏腹に、ヘインリヒさんはこの晩帰ってきませんでした。
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